富士フイルム「顧客満足度が第一 顧客に信頼されるブランドを実現する」
dpreviewが、CP+2019 富士フイルム ゼネラルマネージャー飯田年久氏 プロダクトプランニングマネージャー大石誠氏 シニアマネージャー鵜殿真一郎氏 インタビュー記事を掲載しました。やはりXマウントをオープン規格にする考えはなく、デジタルイメージングにおける次なる革命は " グローバルシャッター " と " AI / ディープランニング " になると予測しています。
長いインタビュー記事なので、興味深かったポイントをざっくり抜き出してみました。
長期的に見た場合、フルサイズと中判フォーマットがどのように共存していくとお考えですか?
- フルサイズと中判フォーマットは、間違いなく共存できると思っている
- 特に「GFX 50R」投入後は、幅広い多くの人が中判フォーマットに興味を持つようになった
- 「GFX 50R」のセールスは期待できそうで、良い兆候であると考えている
フルサイズ市場+中判市場について 市場シェアにおける具体的な目標は?
- 具体的な数字は持っていないが、大まかに言うとフルサイズは市場の1/3を占めていて、わずかに成長しつつある
- 中判市場は全体1%に満たない市場だったが、GFX投入後、中判市場は倍増し良いスタートを切った
- 目標として明確な数値は設定していないが、中判市場を拡大させる事が我々の使命である
- 「GFX 50S」を購入したユーザーの70%が、他ブランドで主にデジタル一眼レフ(DSLR)ユーザーであった
GFXユーザーのプロとアマチュアの比率は?
- 20%がプロフェッショナルで、80%がプロフェッショナルではない
- 「GFX 50R」では、多くの顧客はプロフェッショナルではない
- 「GFX 50R」で読み取れる事は、顧客基盤が拡大しつつあると考えている
- もちろんプロユーザーが増える事も重要で、特にCapture One対応を発表した後は、プロの顧客基盤が拡大し、もちろん「GFX 100」も予定している
「GFX 100」は何を成し遂げてもらいたいですか?
- 我々は、商業的に成功して欲しいと思っている
- しかし もっと重要な事は、写真家に未来をお見せしたい、中判フォーマットの可能性を
- フルサイズ機はおそらく7000~8000万画素になると考えており、我々はさらに大きいフォーマットで先に行く必要がある
- ある意味 このフォーマットで我々の自信を指し示すテクノロージー・ショーケースとなる
- レンズ品質をアピールする側面もあり、GFXレンズ群は、1億画素対応設計を施している
- 「GFX 100」は2019年上期を予定していて、6月末までには登場する
「GFX 100」はどのような用途に使用されると思いますか?
- 我々の直接的なターゲットは、商業写真家、ファッションを撮る人々、風景などある
- しかし、一般的なフルサイズ・ユーザーが現実的な普段使いの写真撮影の選択肢として見始めてくれれば良いなと思っている ※GFXシリーズの観点
- 「GFX 100」は、像面位相差、裏面照射型センサー、ボディ内手ブレ補正機構を搭載しており、多くの顧客がGFXを手に入れてくれればと思っている
XユーザーとGFXユーザーの違いはありますか?
- 違いはあり、Xシリーズ・フォトグラファーは普段使いする傾向があり、GFXユーザーは中判フォーマットの外観と品質を好む
- 「GFX 50R」でXシリーズとGFXシリーズ間のギャップが狭まる事に期待している
- 「GFX 50R」のスタイルは、スナップショット寄りなのだから
「GFX 100」は " 16bit RAW " 撮影が可能ですが、写真家にとって14bitよりさらなる上の16bitのメリットは?
- 主に低ISO時、非常に深いシャドウのディテールが得る事ができる
- データ量は4倍になるが、恩恵はそれほど大きくなく、画像編集はきつい
- 14bitは高速撮影が可能で、16bitがAPS-Cに適しているとは思わない理由である
富士フイルムが、APS-Cをリードするために必要な事は何でしょうか?
- 基本的に新しいデバイスの開発ペースを維持する事が必要
- 新しいセンサー、プロセッサ、レンズラインアップ、それが基本戦略となる
- フォーカスが向上し4K60pに対応するなど、X-T3が典型的な例だと思う
- APS-Cは、フルサイズセンサーより小型なのでより速く、より応答性に優れているので、スピードを重要視している
- もちろん画質も重要で、汎用性こそが最も重要な事であり、よって投資していく
X-T3には大型ファームウェアアップデートあり、古いモデルも長期間アップデートを行う方針がありますが、長期的に見てこの方針は、総売上げに貢献しているのでしょうか? 損害を与えているのでしょうか?
- 我々は、顧客満足度を最大限にする事、顧客に信頼されるブランドを実現し、長期的戦略を構築していきたいと考えている
富士フイルムは、短期間で動画機能に多くの投資を行いましたが、顧客はどのような反応を見せたのでしょうか?
- 4~5年前は富士フイルム内で無視した存在だったが、X-T2で4Kに対応し、新しいプロファイルを追加し、AFなどすべての事に取り組んだ
- 時間は掛かるが、間違いなくより一層の顧客が富士フイルムを本格的なビデオメーカーとして注目する事となる
- 4Kに対応したX-T2発売後、多くのX-Pro2ユーザーも4Kを要望し始める事となり、我々はX-Proユーザーが4Kに感心を持つとは思っていなかった
- なので、「GFX 100」の4K動画で新しいものをお見せできればと思っている
XシリーズもしくはGFXシリーズにおいて、動画専用機を投入する余地はありますか?
- それは可能である
- 具体的な計画はないが、いつか検討する時が来るかもしれない
Xマウントでシネマ用のMKレンズをラインアップしていますが、このラインの将来性は?
- 間違いなく将来性はある
- 良い動画は、動画志向の良いレンズを必要としており、間違いなく成長のチャンスである
- 研究開発(R&D)の投資レベルは高くなるが、Xマウントと共にEマウントをラインアップする事によって、ビジネス的に成り立っている
- これにより、(我々の製品が)幅広い顧客層に及ぶ事となる
同じ画像品質の2本のレンズがあるとしましょう。1本はカメラ内補正が必要ではないレンズ、もう1本はボディ内補正が必要であるが小型で安価なレンズ、写真家にとって良いソリューションはどちらでしょうか?
- それは、答えるのが非常に難しい質問です
- 我々の理念は、デジタル補正を最小限に抑え、レンズの光学性能を最大限に引き出す事にある
- おっしゃるように欠点はサイズとコストであるが、要はバランスである
ソフトウェア補正に頼る場合、どの時点で決定するのでしょうか?
- まず光学設計から始める
- 我々のレンズ設計者は、ソフトウェア補正ゼロで設計を開始し、レンズが大き過ぎたり重過ぎたりする場合、ソフトウェア補正について話し合いを行う
- 常にバランス(が大事)であるが、我々の最優先事項は " 光学品質 " であると考えている
以前AFスピードを犠牲にしてでも光学性能を優先する事について話をしましたが、その考えは変わりましたか?
- それはXマウントレンズ初投入時の話で、今そのレンズを再設計するとすれば、別のアプローチを取り、光学品質とAFのより良いバランスを取ると思う
- 今では新しいアクチュエータと新しい光学技術があるため ※レンズなのでアクチュエータは、モーター関連の駆動系技術を指していると思います
- 第1世代のレンズ群と比べると、画像品質を犠牲にする事なく、レンズを小型化する技術を学び開発している
技術・生産技術面で2019年の富士フイルムが、これまでの富士フイルムとどう違うのか例を挙げてもらえませんか?
- 生産に関しては、一部 自動生産ラインの導入を開始した
- 我々は、大部分 職人技術に依存しているが、機械で行う方がより正確な調整箇所は、自動化している ※意訳しています
レンズ素材も進化しつつありますか?
- 素材とコーティング両方
- 数年前に " ナノGIコーティング " を採用し、これは第1世代のレンズには採用していない技術
- 5年前との違いはまだあり、レンズ設計において動画撮影に対応する条件が出てきた事
- Xシリーズ開始時は静止画に焦点を当てていたが、最近のレンズは動画撮影に最適化したインナーフォーカス・システムを採用している
- 我々は、動画に関しても顧客を大事にしている
富士フイルムが、スポーツや野生動物写真市場において主役の役割を果たす可能性は?
- 将来的にはある
- 現時点でそのセグメントの顧客層は少ないが、「XF200mmF2 R LM OIS WR」がこの種の顧客の道を開く事となる
- 時間は掛かると思うが、今後 我々は富士フイルムに来るこの手の顧客を目の当たりにする事だろう
カメラ設計において、顧客の要望に応えるべく何かを変更する可能性は?
- まずセンサーとプロセッサに注意を向ける必要がある
- そしてパフォーマンスとスピード、そして全てを見る必要がある
X100シリーズをどのように進化させようとお考えですか?
- X100Fユーザー100人にフィードバックを求めたら、おそらく100通りの異なる答えが返ってくる
- レンズは2010年設計のままで一番多いリクエストは、おそらくレンズの改良だと思う
- X100シリーズは、1200万画素で始まり、今では2400万画素なので、レンズへの要望が一番だと思う
- 2つ目は、可動式モニタが必要なユーザーと必要としないユーザーがいる事
- 4K対応に関するフィードバックはそれほど多くない
- 4つ目は防塵防滴仕様ですが、最も重要な事はスタイルやサイズを変更したくない人々がおり、これは(我々にとって)挑戦である
X100が富士フイルムにとって最初の一歩でしたが、X100シリーズはまだ重要な製品ラインですか?
- もちろん、X100シリーズは象徴的なライン
- 製品名の法則を変えていないのは、そのためである
- プレッシャーがのしかかる製品で、間違いを犯す事が出来ない製品なのです
- X100Fは第4世代にあたり、富士フイルムを信頼する大きな顧客を抱えているので、失望させないように開発に励む必要がある
オープン規格のマウントがありますが、Xマウントを " 閉じた " マウントにし続ける事にどのような論理的背景があるのでしょうか? 変わる可能性は?
- 我々の姿勢を変える必要性はないと考えている
- 必要な焦点距離を網羅した31本のレンズをラインアップしているので、サードパーティにマウントを開放する必要性は感じない
- サードパーティがリバースエンジニアリングしたレンズは、顧客の観点において、より多くの選択肢となり良い事だと思う
デジタルイメージングにおいて、次なる大きな革命は何だと思いますか?
- センサーの観点において、みんなグローバルシャッターについて話し合っている
- これは、将来的にいつか実現する事である
- 他には、カメラ内で処理するより多くの演算技術や人工知能技術がある
- おそらくこの2つが、大きな革命となるだろう
この2つのテクノロジーが現時点で実装可能だった場合、どのような事が可能だと思いますか?
- モジュラーGFX! もちろん冗談である
- グローバルシャッターは、ローリングシャッター現象が起きないので設計の自由度を高める
- グローバルシャッターにより撮影の可能性が広がる事だろう
- AIとディープランニングは、撮り手がシャッターボタンを押すだけで、カメラの設定を心配する事なく撮影が可能になる
今後も顧客重視の製品造りで行く事が伺えるインタビュー記事で、現在X-T3が好調なだけに「X-Pro3」や「次世代 X100シリーズ」の登場に期待です。あとレンズ自体も時代に合わせ改良が施されている事が伝わります。