富士フイルム「X-S10はゲートカメラ」「すべてをバリアングル式しようと思っていない」
カメラのキタムラが、富士フイルム「X-S10」上野隆氏インタビュー動画 前編・後編をYouTubeに公開しました。個人的に興味深かったポイントをピックアップしてみようかと。
【前編】フジフイルム X-S10 開発担当者インタビュー!
X-S10コンセプト
- 好評の「X-T4」の基本性能を出来るだけ " 小さく・軽く " そして " 使い易く " それでいて " しっかり操作が出来る " こういったコンセプトに落とし込んだのが「X-S10」になる
- 「X-S10」の " S " の意味は、Small (小さい) / Slim (薄い) / Secure (しっかり握れる安全性) / Simple (モードダイヤルとコマンドのシンプルな操作性) / Stabilization (手ブレ補正のS) などの要素が詰まっている
X-S10の外観・グリップ
- 昔はカメラの重量を左手に乗せて右手は添える構え方が一般的だったが、最近は「片手撮り」も増えてきた
- 新たにXシリーズに入ってきた方達を念頭において開発した
- 初めての人にも馴染み易いようにグリップを大きく前に出して、自然と指がシャッターボタンにかかる位置に設定した事が、このグリップの最初のポイント
- そうする事によりグリップ内にバッテリーを縦に置けるようになり、小型ボディにIBISを搭載するスペースを確保する事にも一役買っている
モードダイヤルを嫌っていた訳ではない
- 他社を含めてAFが始まったフィルムカメラぐらいから基本的にモードダイヤルという世界はある
- これで直感的に設定(A/S/Mなど)を切り替える事が可能
- 我々がやりたかった事の1つに " カスタムポジション " があり、C1~C4まで用意している
- 「X-T4」などでは、カスタムはメニュー内にあるが、ドライブモード、AFモード、露出モードなどまとめて登録して一発で呼び出したい、すべての設定をワンアクションで変える事をやるにはモードダイヤルは必然・必須になってくる
- 我々は、モードダイヤルを嫌っていた訳ではない
- モードはモードの良さが分かっていた上で「Xシリーズ」の個性・アイデンティティを確立する上でメカニカルダイヤルを採用してきたが、「X-S10」はXシリーズに入っていただく " ゲートカメラ " 的な役割を担わせるとシンプルな操作性が大事になってくるのでモードダイヤルを採用した
ファンクションダイヤルでフィルムシミュレーション
- 富士フイルムカメラを使ってみたい理由の筆頭は、フィルムシミュレーションと言って過言ではない
- 富士フイルムと言えば、画質その中のフィルムシミュレーション
- なるべくフィルムシミュレーションを表層の階層へ、一等地、フィルムシミュレーション切り替えダイヤルのようなファンクションダイヤルを設定した
- アドバンスドモードにした場合、このファンクションダイヤルでアドバンストフィルターが変更可能になり、非常に使い易いダイヤルになっている
すべてのカメラをバリアングル液晶にしようとは思っていない
- すべてのカメラをバリアングルにしようとは思っていない
- カメラにはそれぞれ性格があり、主たる撮影目的のために一番良いデバイスなのか、そういうところで我々は選んでいる
- トップトップのスペックは「X-T4」より劣っているが、必要十分な機能が備わっており、昨今のYouTuberやVloggerがしっかり使えるカメラになっている
- 現状アングルの自由度という意味では、バリアングルに敵う背面液晶モニタは、今のところないかと
- 3軸チルト液晶モニタは静止画撮影において有効に働くので、静止画に軸足を置いたカメラには今後も有効だと思っている
- 「X-S10」の性格を考えるとバリアングルが有効だろう
- 「X-T4」もバリアングルで出して色々なご意見はいただいているが、結果的にはポジティブに受け入れられたと思っている
【後編】フジフイルム X-S10 開発担当者インタビュー!
ボディ内手ブレ補正機構 (IBIS)
- IBISは、皆様がレンズ交換式カメラに搭載を期待した機能の3本指に入ると思う
- 「X-T4」や「GFX100」を見て分かる通りIBISを搭載するとどうしてもボディサイズは大きくなってしまう
- IBISを搭載し、サイズを小さくし、軽くして、画質に影響を出さないようにするのは、もの凄く大変
- 「X-S10」にIBISを搭載するのは当初不安だったが、これまでの知見があったので「X-T4」と「X-H」のいいとこ取りする事で、出来るだけ補正段数を減らさず小型化する事が出来た
- X-H1 → X-T4 → X-S10 IBISユニットは30%ずつ小型化が進んでいる
- IBISは放熱的に不利になってくるし、「X-S10」は動画も重視しているので、放熱を確保しつつ最大6.0段分効果の手ブレ補正を実現しており「X-T4」と0.5段分しか差がなく小型化を実現している
画質は一切調整なしに「X-T4」を引き継いでいる
- 「X-T4」の低輝度性能や最速AF性能などの画質性能すべて「X-S10」に引き継がれている
- 両機がどこで差が出るのか思い付かない(笑)
- もちろん連写性能や動体追従性能は「X-T4」の方が上
- 性能に対するカメラサイズは、良い意味でのギャップでこのカメラの特徴となっている
フィルムシミュレーション
- 「X-T4」以降のフィルムシミュレーションは18種類もあり、フィルム時代から弊社のフィルムに馴染みのある方は名前を聞いただけで分かるが、むしろそうではない方にこの「X-S10」を使っていただきたい
- ファンクションダイヤルでフィルムシミュレーションを表示させた後にQボタンを押す事により、説明文が出てくるので、これを参考に選んでもらればと思う
- 若い世代の写真愛好家は、フィルムで撮った事のない方が増えてきている
- この説明分は、画像設計担当者が監修をしているので、読むだけでも楽しいと思う
低輝度AF性能
- -7.0EVは、もちろん絞り値に影響してくるので、先月発売した「XF50mmF1.0 R WR」を装着した時に " -7.0EV " を実現している
- F1.4のレンズであれば " -6.0EV " になる
- 「X-T4」と「X-S10」の低輝度性能は、まったく同じ
- スマートフォンの方も日進月歩で暗所性能を改善してきているが、レンズ交換式カメラはセンサーサイズが大きく画素ピッチも大きくなるので、暗所性能に直結してくる
- 加えて位相差AFとのコンビネーションでスマートフォンでは出来ない領域でもしっかりピントが合う
「AUTO/SP」モード
- シーンポジションは、どちらと言うと簡単機能になる
- RAWデータ同時記録に対応している
- 富士フイルムの画質機能は、フィルムシミュレーションだけでなく、カラークロームエフェクトや明瞭度やダイナミックレンジ優先だとか色々な機能が入っている
- それを1つ1つ使っていくのは知識が必要で、今回のシーンポジションはそう言った所もカメラが自動で判別してくれる
- 例えば、青空が広がるシーンでは自動でカラークロームブルーが掛かるとか
- フィルムシミュレーションや各種エフェクトをフルに使って最高の結果を出そうしてくれるのが、この新しいSP(シーンポジション)になる
- シーンポジションだけで撮った方が、間違いが少ないかもしれない(笑)
- いざとなればRAWがある(笑)
- 対象者の幅もこのシーンポジションで広がったと思う
「X-S10」は、取っつき易さがありながら非常に奥が深く、やりたい事はかなりハイレベルな事までやれるので、Xシリーズが初めてという方、もしくはカメラ自体が初めてという初心者の方はもちろんのこと、ベテランの方のサブカメラ、もしくは場合によってはメインカメラとして十分活躍できる性能を持ています。なので是非一度お手に取ってお試しいただければと思いますと、最後に上野氏がメッセージ。