パナソニック Lマウント/MFT 今後の方向性が伺えるインタビュー記事が登場
Imaging Resourceが、パナソニック 山根洋介氏 インタビュー記事を掲載しました。Lマウントとマイクロフォーサーズの現状そして今後の方向性が伺えるインタビュー記事となっています。
ボリュームがあるインタビュー記事なので、個人的に興味深かったポイントをざっくりピックアップしました。インタビュー自体は3月に行われたもので、掲載にあたってパナソニックに再確認し新しい情報に置き替えた記事の模様。COVID-19関連は、生産状況は正常に戻っており、地域差はあるものの売り上げは回復傾向で新時代に向けた研究開発(R&D)の遅れはないとのこと。
「S1H」は想定以上の売上を記録
- 「S1H」の売上は、我々の予想を上回った
- この機種は、ミドルレンジの低予算シネマやビデオ・プロダクションをターゲットにしている
- ビデオグラファーやシネマトグラファーはこの機種を気に入っており、Netflixに認定を受けたカメラでもある
- 数がかなり出る機種になるとは思っていないが、対象となる顧客のために強化し続け、多くのビデオグラファーやフォトグラファーが実際に使用し重宝してくれればと思っている
- 写真撮影だけでなく、動画・シネマ撮影にアドバンテージがあるレンズラインアップを拡充していく
いきなり大量に数がでる機種ではないとしながらも「S1H」は、パナソニックの想定上の売上を記録している事が分かります。S1シリーズは、プロ向けと公言しているだけに対象となる顧客に向けた製品造りを行っているので、この辺はコンシューマーとの感覚が違ってくるかもしれません。
Lマウントレンズは、これから単焦点レンズや(超)望遠レンズを強化していく
- F2.8通しの定番レンズを数本ラインアップ済みで、このに加えて単焦点レンズ3本を投入予定
- これらのモデルは、様々な動画撮影用途にも対応している
- シネマトグラファーやビデオグラファーから " (超)望遠レンズ " の要望も聞いており、本当に「S1H」に相応しいコンセプトなのか明確にする必要があり、もしそうであれば " 望遠 " と " 超望遠 " の開発を進めていく
レンズロードマップの計画に基づいて開発が進められていく事が伺え、まだ確定はしていないようですが " 望遠 / 超望遠 " も今後期待できそうなコメントも。パナソニックは、レンズロードマップ上でまだ焦点距離とF値は明らかになっていませんが、大口径広角ズームレンズと望遠ズームレンズを予定しています。
「S1H」のメリットはコンパクト
- 「S1H」のメリットはコンパクトさ ※業務機器として見た場合
- コンパクトボディながらフルサイズセンサーを搭載しているが、とにかく " モビリティ " が強みなのである
- なので超望遠レンズが「S1H」に相応しいのか、我々がはっきりさせないといけいない事である
- 望遠と超望遠の場合、よりコンパクトなマイクロフォーサーズで行くべきで、マイクロフォーサーズを含めて今後の開発プランを練って行く
先程のレンズ開発に関係するコメントで、Lマウントで(超)望遠レンズを造るにしても「S1H」のコンパクトさを損なう事ないレンズに仕上げる事ができるのかどうかに掛かっている事が伺えます。マイクロフォーサーズシステムを含めて考えるとコメントしているので、今後のGHシリーズは、カラーサイエンスや機能面で「S1H」や「VARICAM」とのワークフローを前提に設計される可能性があるかもしれません。
メリットを最大限に活かすため「GHシリーズ」をどう進化させるのか検討中
- フルサイズのSシリーズは高画質を目指しているが、最適な被写界深度・モビリティ・ズーム比において、マイクロフォーサーズだけが実現できるビデオ・フッテージがある
- マイクロフォーサーズは、我々にとって動画撮影ニーズをカバーする貴重な存在でもある
- 多くのビデオグラファーが、1人撮りにおいて高画質撮影でGHシリーズを使用しており、間違いなくマイクロフォーサーズの特徴を活かした非常に魅力的な映像が撮影可能となっている
- 「GHシリーズ」をどう進化させるのか、メリットを最大限に活かすべく検討中である
- センサーサイズが小さいので高フレームレート撮影も優れている
再編集されているものの元々は2020年3月に行われたインタビューで、現時点でさらに開発が進んでいると思うので、次世代「GHシリーズ」がどのように進化して登場する事になるのか興味津々。個人的に " 有機センサー " 搭載に期待してしまいます。ハイスピ―ド撮影が進化しそうなコメントも。
Lマウントアライアンスから個性の違う機種が登場する事は良い事
- Lマウントアライアンスが発足し18ヶ月が経ったが、ライカが「SL2」を投入し、シグマが「fp」を投入した
- これらのモデルすべてが異なり、3社が異なる顧客をターゲットとし、異なるコンセプトを追求し、私が非常に満足しているポイントである
- Lマウントアライアンスにとって非常に良い事であり、Lマウントそのものが強力に進化する事となる
Lマウントアライアンス発足時、非常にインパクトが高かった印象ですが、着実に3社から新型カメラ&レンズが投入されてきている印象です。特にカメラの方は、ライカ・パナソニック・シグマは同じマウントを採用しつつも独自路線を突き進んでいる感じでしょうか。
将来的にLマウントを動画撮影業界のスタンダードにしたいと思っている
- Lマウントは、動画撮影に最適なマウントだと考えている
- いずれはLマウントを動画撮影業界のスタンダードにしたいと思っている
- アライアンスの中で動画性能の強化する術を議論し、ある意味動画撮影のスタンダートと言えるものにしたいと思っている
- 個人的な希望であるが、Lマウントが動画撮影におけるスタンダードなフォーマットになってくれればと
やはりパナソニックは、動画志向コンセプトで行く方向である事が伺えます。Lマウントが、PLマウントに取って代わるぐらい成長するのかどうか分かりませんが、シグマ「fp」も動画志向のモデルだけにLマウントアライアンスの動画の取り組み方に注目したいところ。このコメントを見る限りパナソニックの軸足は、マイクロフォーサーズからLマウントに移行したと言って良いかもしれません。
「G9」は高く評価されており今後どう進化させるのか、フルサイズとマイクロフォーサーズのバランスを見極める
- 「G9」を投入する事により、パナソニックが写真に関してかなり真剣に取り組んでいるメッセージを世界市場に伝える事が出来たと思っている
- 「G9」はかなり高く評価され、我々にとって販売量自体非常に高いものとなっている
- どのように「G9」を進化させるか…フルサイズとマイクロフォーサーズ双方におけるバランスをスタディ中である
- フルサイズのセンサーサイズやマイクロフォーサーズのコンパクトさなど、この辺のバランスをスタディする事により、このカテゴリーの将来的な展開を熟考している最中である
少なくとも後継機は検討していそうな印象。「G9」はどう見ても「S1」「S1R」開発に向けたプロトタイプだったような機種にも感じるし、今後「G9」がどのようなスチルコンセプトの機種に進化していくのか注目です。ひょっとするとフルサイズ機で後継機を投入する可能性もあるのかな…と受け取る事も出来そうなコメントに感じました。あくまでも個人的に。パナソニックが「S5」をどのようなコンセプトで売り出すのか興味津々。
「GX」や「LX」は、スマートフォンの影響が大きく、開発の優先順位は低い
- このカテゴリーは、徐々にスマートフォンに吸収されつつある
- 個人的にスナップ撮影で「GX」や「LX」を使用し非常に有効であるが、このカテゴリーがスマートフォンの勢力拡大の影響を受けている事は認めざるを得ない
- このカテゴリーはスマートフォンの影響を受けているものの、それでも使い続けているユーザーがいるのも確か
- しかしこのカテゴリーが縮小する事は認めないといけない
- カメラ事業として開発リソースの優先順位を付ける必要がある
「GMシリーズ」は海外で不評だった模様。「GXシリーズ」とレンズ固定式ですが「LXシリーズ」は、ストリートスナップ用途では使い易いサイズのカメラで愛用しているMFTユーザーさんは少なくないのではないでしょうか。ここ最近のスマートフォンは多眼しつつあり、このカテゴリーのカメラが得意な焦点域をカバーしつつあるので、すでに影響を受けている事が伺えます。
編集後記
パナソニックはLマウント フルサイズミラーレス機「LUMIX S5」を 海外9月2日 / 国内9月3日 に発表予定で、やはり今回の発表予告を受けて今回のインタビュー記事を掲載した事が伺えます。新世代「GHシリーズ」に期待しながらも、市場がこのカテゴリーを興味を持ち続けるのか、パナソニックはLマウントに注力しており、市場がフルサイズセンサーに魅了されてしまうのか、パナソニックのMFTハイエンド機の運命は少し不確実であると感じている模様。