「PENTAX17」は最初の一歩 キーコンセプトは伝承 皆さんと少しずつ歩んでいきたい
リコーイメージングが、ハーフサイズフォーマット単焦点フィルムコンパクトカメラ「PENTAX 17」をついに発表しました。フィルムプロジェクトストトーリー 第4弾を公開しており、その中で商品企画兼デザイン担当のTKO氏が熱い想いを語っています。It's Time for Film ! PENTAX ! PENTAX ! PENTAX !
フィルムカメラプロジェクト 色々なアイディアがあった
今回このプロジェクトの1番初めとなるこのカメラの企画を進めるにあたって、どのようなカメラにするか本当に悩みました。何種類も一度に検討できるわけでなはないんですね。フルサイズ、一眼レフ、フルメカカニカル、中判カメラなど色々なアイディアがありました。
今 アナログカメラを開発する意義と意味
僕も大好きなんです。それらを作ったらファンの皆さんはきっと喜んでくれて、とても大きな話題になるだろうと思いました。しかし今のアナログカメラが置かれている環境では、もしそれらを作る事が出来たとしても、おそらくとても高価なカメラになっていくと思います。研究開発期間もかなり長いものとなると思います。新しいカメラが出たとしても、お買い求めいただける方はとても限定的になるのではないでしょうか。
それではアナログ写真を楽しみたいエントリーユーザーが苦労している今の状況は何にも変わりませんよね。10年20年先に行って考えた時に今アナログユーザーが増えていかなければ、彼らの次の世代には繋がりませんよね。途絶えちゃうかもしれません。
ですから最初のモデル、数少ない初めのこのモデルのこの機会は、フィルム写真に興味がある新しいユーザーのために使う事に決めたのです。どんなに良いカメラを作ってもまず彼らの手に届かなければアナログ市場は今のままだと思いました。
PENTAX K-1000 の存在
その昔「PENTAX K-1000」というカメラがありました。フィルムカメラが電子化され競争が激化していった時代にクラシックなスタイルでシンプルな機能の機械式カメラとして販売されたんですね。実に30年以上販売されました。当時最先端の高価な電子制御のカメラと比べると特別新しい機能も持たないオーソドックスなカメラだったんです。しかしそれは、世界中の写真を始めたい多くの方々に愛されました。このカメラで写真の世界に入ってきた方はたくさんいらっしゃると思います。このカメラがなぜ販売される続けたのか、 僕は今なら分かります。それは新しいユーザーの皆様が支えてくれたからなんですね。カメラ市場を広げるためには新しい仲間を増やす事が大切だったんです。
「PENTAX 17」は、アナログ写真に入ってきたユーザーが1人でも多く楽しめるよう開発
今回のカメラは「ASAHI PENTAX K-1000」と比べると見た目も機能もまったく違います。作られていた時代も違いますし、似ても似つかないモデルです。でもそのスピリッツは同じです。「PENTAX 17」は、アナログ写真に入ってきたユーザーが1人でも多く楽しめるように作られたカメラなんです。
ですからこのカメラが発表された時、驚かれた方もいらっしゃいます。自分の欲しかったカメラと違うと思われた方もいらっしゃると思います。でも時間を戻せたとしても、自分はまたこのカメラを作ると思います。アナログカメラの仲間を増やすために何度でもやると思います。
PENTAXユーザーは優しすぎる もう感謝しかありません
前回の動画の後に僕は、もっとお叱りのコメントをたくさん頂戴するのではないかと覚悟していました。「これは我々が使いたいカメラではない "」…と。でも、本当に多くの方々からご理解とご共感をいただきました。私は感激しました。「このカメラは自分が望んでいたカメラではなかった。しかし、これからのユーザーのために必要です 」とか「自分も買って楽しむよ "」や「娘と楽しむよ」とか「次のステップを応援している」とか、本当に皆さんは優しすぎます。本当にありがとうございます。
アナログ世界を広げるためには、一歩一歩なんです。我々も一足飛びにハイエンドまで行けません。少しずつ、少しずつ、仲間を作り、実績を作りながらなんです。先月とうとう手巻き機構に携わった経験のあるエンジニアが、長い勤めをはたし定年退職を迎えました。当時を思い出しながら色々アドバイスをしてくれました。もう感謝しかありません。
フィルムカメラを継承する最後の機会だった
僕らの会社にとっても今回が本当にバトンを繋ぐ最後の機会だったんです。先輩方から受け取った技術とスピリッツを持って、今回のモデルからまた皆さんと少しずつ歩んでいきたいと考えております。
フィルムカメラプロジェクトのキーコンセプトは " 伝承 "
皆さんもお気付きの通り、今回のチャレンジの根っこにあるところ、キーコンセプトは " 伝承 " なんですね。アナログカメラの楽しさを次の世代に伝える事なんです。そして過去の素晴らしい技術を次の世代のエンジニアに伝える事なんです。
プロジェクトをやり遂げる
どんなに困難でもやり遂げたかった。そしてアナログカメラ作ったら完了なのか…違いますよね。アナログカメラを楽しむためにはフィルムメーカーの皆さん、ラボの皆さん、修理業者の皆さん、新品・中古カメラを販売する皆さん、現像液などを処理する業者の皆さん、もちろん同業の皆さん、このような方々が支えてきたからこそ今があるんです。だからアナログが楽しめているんです。皆様の努力に最大限の敬意を表して、僕らもその輪の端に加わらせていただき協力し、このシステムを保っていければ良いなと思っています。
新しい時代だからこそ輝くアナログの世界
ここから一番言いたい事です。最も大切なのが、まさに今アナログカメラを使っている、またかつてアナログカメラを使っていたユーザーの出番という事です。アナログカメラの素晴らしさを伝えられるのは、皆さん方しかいらっしゃいません。スマートフォンやSNS全盛の時代のアナログ写真には、過去にはなかった新しい価値観があります。このアナログ世界に入ってきた新しい価値観をみんなで思い切り楽しみましょう。そしてこの時代の新しい使い方や表現をみんなでリスペクトしましょう。そうすれば過去からの使い方や歴史往年の技術などは、きっと多くの新しいユーザーに興味を持ってリスペクトされるはずです。この関係が広がった時、世代を超えてこのアナログワールドはずっと輝くものだと信じています。
今回カメラに携わる1人の人間としてアナログの素晴らしさって何だろうと改めて考えさせられました。心では分かっているのに、上手く伝えられない、説明が難しかったんです。
常に技術・価格・時間との戦いでした。その中で皆様からいただいたアイディアやご意見を取り入れながら進めてまいりました。それが僕らにとってとても助けになりました。本当にありがとうございました。
制約が山ほどある中で精一杯良いカメラに仕上げた「PENTAX17」
皆様のご協力のおかげでこの製品を世に送り出す事が出来ました。もうただただ感謝の言葉しかありません。制約は山のようにありました。でもその範囲で精一杯、精一杯、良いカメラに仕上げたつもりです。「PENTAX17」をお手に取って楽しんでいただければ、こんなに嬉しい事はありません。これからもアナログの世界が広がっていくことを心から願っています。このプロジェクトを応援してくださった多くの皆様に心より御礼申し上げます。
「PENTAX17」は最初の一歩 僕らだけじゃなく " 皆さんとのプロジェクト "
ようやく " 1機種 " 販売できました。初めの一歩です。どこまでやれるのか正直分かりませんが、今後もこのようなチェレンジを続けていければ良いなと思っています。今回のプロジェクトはもう僕らだけのプロジェクトではありません。" 皆さんとのプロジェクト " です。想いのある皆さんで是非頑張りましょう。It's Time for Film ! PENTAX ! PENTAX ! PENTAX ! フィルムだよ!
発売日と価格
- 発売日 … 2024年7月12日
- 希望小売価格 … 107,000円+税
- リコーオンラインストア 売り出し価格 … 88,000円(税込)
「PENTAX17」の発売は2024年7月12日を予定し、希望小売価格は107,000円+税。ちなみにリコー オンラインストアで88,000円(税込)で予約を受け付けています。