シグマ山木社長「Lマウントは、丁度良いマウント径とフランジバック」インタビュー記事
dpreviewが、フォトキナ 2018 シグマ山木社長インタビュー記事を掲載しました。Lマウントは丁度良いマウント径とフランジバックで以前のインタビュー記事と同様にLマウントレンズは2019年中旬を予定しているとコメント。あと今後もシグマらしいユニークなレンズを開発していく姿勢も示しています。
Lマウント・アライアンスは、どのような経緯で?
- 正確には覚えていないが、2~3年前ぐらいの事だったと思う
- 当時Foveonテクノロジーを投入したフルサイズミラーレス機を造る事をすでに決定していて、独自ショートフランジバックのフルサイズミラーレス機の開発を計画していた
- 設計済みの状態で、正確なスペックは覚えていないが、フランジバックはLマウントと同じ20mmぐらいで、同じようなマウント径だったと思う
- そのころパナソニックから接触があり、協業を提案され、パナソニックはライカにも接触し3社が協業する事に
- 独自マウントの開発を中止し、Lマウントシステムに参加する事に同意する事なった
技術的な観点でLマウントの特に魅力的なところは?
- バランスが良いマウントだと思う
- フランジバックは短過ぎない短さで、マウント径も大き過ぎず、良いバランスである
- 径が大き過ぎるとカメラボディを小型化する事が難しい場合が出てくる
- 大きいマウント径でF2.8単焦点レンズやF3.5-5.6などのF値が暗めのレンズを造ると、漏斗のような先細った形状になってしまう
- 個人的な意見になってしまうが、それは見栄えが良くない
- なのでLマウントは良いバランスのマウントであり、20mmは短過ぎないフランジバックなのです
Lマウントの投入時期は? 現行レンズのLマウント版になるのですか? それとも全く新しいレンズになるのでしょうか?
- エンジニアに確認する必要があるが、Lマウントレンズ第1弾は2019年半ばの発売を予定している
- すでにソニーEマウントバージョンのレンズを14本をラインアップしているので、これらのレンズのLマウント版を来年発売する予定である
- まったく新しいLマウントレンズ群も発売予定である
ニコンとキヤノンの新しいマウント周りで連絡は取り合っていますか?
- 新システム周りで? まったく取っていません
- 2つの新システムにすごく興味はあるが、現時点でその計画はない
ニコンとキヤノンがソフトウェアを少し変更し新型カメラを投入した時に、サードパーティ製レンズが正常に動作しなくなる事があり、それを危惧しているのでしょうか?
- サードパーティ製レンズの動作における潜在的なリスクは否定できないが、ファームウェアを継続的に強化していく
- ちょっとした問題が起こった場合でもファームウェアをアップデートさせて、USB Dockで完全に動作させる
シグマは、パナソニック S1 / S1R に何らかの影響を与える事はありましたか?
- 個人的に新型カメラに関して何も知らず、フォトキナのプレスカンファレンスで初め見た
- 新システムの製品ロードマップに関しては、3社で製品ロードマップの情報を交換する事はない
- コンプライアンス上禁止されていて、それを行う事はできないのです
SAマウントについてお聞かせください
- 既存のカメラの製造と販売は継続するが、今後新たなSAマウントカメラを開発する事はない
- デジタル一眼レフ(DSLR)用レンズを造り続ける限り、SAマウントレンズを造り続ける
- 世界中にSAカメラユーザーがまだいるのだから
パナソニックがフルサイズミラーレス市場参入後、マイクロフォーサーズレンズ市場は縮小すると思いますか?
- 分かりません、この質問を答えるには私は適任ではないかもしれない
- フォトキナでマクロフォーサーズ機を使用しているジャーナリストはたくさんいて、個人的な意見では、コンパクトな事が必要な場合マイクロフォーサーズは素晴らしいシステムである
今後 他のサードパーティ製レンズメーカーとどう差別化を付けていくお考えですか?
- マジックなど存在しないと思っているが、ユニークで他の企業と違うものにしたい
- 技術に投資し、工場に投資し、顧客とのコミュニケーションを向上させていく
- 他の企業と差別化するべく、何でもやっていく
- 長い間私達のために働いていきた非常に忠実な従業員がおり、今では第2世代・第3世代の従業員がいる
- 半導体とは異なり、レンズは従業員の経験とノウハウが大きな差となる
- レンズは、経験豊富な従業員が要となるアナログベースの技術
- 工場を移転したくない理由はそこにあり、もし工場を移転したら経験豊富なスタッフを失う事になる
なぜ40mm Artレンズをクリエイトする事にしたのですか?
- 40mmは、ビデオグラファーに大変に人気のある焦点距離で、シネ市場から需要があったのです
- ユーザーからのリクエストもあった
- ちなみに最初のDP2カメラの焦点距離は、40mm相当の焦点距離でした
デジタル一眼レフ用レンズとミラーレス用レンズ 将来的に販売する割合はどうなっていくとお考えですか?
- 3年もしくは4年以内に弊社のミラーレスマウントレンズのセールスは、デジタル一眼レフ用レンズよりも遥かに大きくなると予想している
- おそらく70%-30%
キヤノン RFマウントとニコン Zマウント 新レンズの意見をお聞かせください
- キヤノンの新RFレンズは、非常に強い印象を受けた
- 「50mm F1.2」と「28-70mm F2」は、少しうらやましい
- マウント径が大きくショートフランジバックだからこそ可能なレンズ
ミラーレスならではの機能の1つにカメラ内補正がありますが、新ミラーレスレンズ開発時にカメラ内補正を前提に設計する時が出てくるのでしょうか?
- 数年前までは、カメラ内(ソフトウェア)補正に関してかなり否定的だったが、今ではセンサー性能(画素数)が向上し昔と比べて補正アルゴリズムはかなり向上している
- ソフトウェア補正は良い画像品質を実現する場合、良好なツールと考えている
- なのでキヤノン EOS デジタル一眼レフカメラのレンズ補正のサポートを始めた
- 便利なツールであるが、それに頼り過ぎるのは禁物である
レンズ開発時の優先順位は?
- 基本的に " 需要・要望 " に基いて行われる
- しかしSAマウントレンズの重要が非常に小さいものであっても独自システムだけに優先される
- 今後の展開は、今やLマウントを有しているだけに優先していく
次の段階に進めるパフォーマンスを向上させる次世代テクノロジーは?
- 例えば、FLD(特殊低分散ガラスの1種)で我々は以前は有していなかった
- HOYAガラスを採用していて、新しいガラス素材を共同開発した
- 細部まで気をつかう写真家が色収差をチェックしたら、このレンズの良さを分かってくれると考えている
- しかし解像度だけをチェックした場合、現行ニコン/キヤノンの70-200mm F2.8と比べて差はないかもしれない
現在複数のマウントをサポートし、それにLマウントが加わり、さらに今後ZマウントとRFマウントをサポートする可能性がありますが、アイデンティティを失う事なく幅広く対応し、どう会社を成長させようとお考えですか?
- それは非常に困難な事であると認めるが、市場がこれまでと同じように成長するとは考えておらず、1マウントあたりのレンズ生産量が減少していく事は明らかである
- 1ヶ月に多くの種類の製品を生産する必要が出てくる事になる
- これは効率が悪く、最終的に生産コストが高騰してしまう可能性がある
- 効率を維持した新生産システムを構築する必要がある
- 工場の規模を拡大している最中で、今後数年間は投資していく
あくまでもシグマらしいユニークなレンズを造り続ける姿勢を示し、LマウントレンズもFEレンズベースのレンズだけでなく、新たに設計したレンズの開発も示唆しています。今後ZマウントレンズとRFレンズに対してどうアプローチしていくのか興味深々。
Lマウント陣営は、様々なフォトキナ 2018 インタビュー記事において、マウント径とフランジバックのバランスが良いマウントである事を主張している印象です。2019年中旬にLマウントの発売を予定しているという事は、同じ時期に " Foveon フルサイズミラーレス機 " も動きがある可能性も。