ホーム > カメラニュース 2022 > 富士フイルム「フルサイズはあえて選ばなかった」「機材を育てるのはユーザーの皆さん」

富士フイルム「フルサイズはあえて選ばなかった」「機材を育てるのはユーザーの皆さん」

マップカメラが、富士フイルム イメージングソリューション事業部 新規商品戦略 グループ統括マネージャー 上野隆氏 Xマウント10周年 インタビュー動画を公開しました。個人的に興味深かったポイントをピックアップしてみました。

上野氏がこれまで印象に残ったカメラの質問に対して「X-T1」を挙げ以下のように語っています。

「X-T1」は富士フイルムの将来を賭けて作ったカメラ

最初のカメラと言えば「X-Pro1」が印象深いですが、どれか1台と言えば「X-T1」ですね。「X-Pro1」を出した後に「X-E1」「X-A1」「X-M1」を出したが、どこか1つブレイクし切らないとうところがあった中でここは思い切ってチャレンジしようと事業部一同一丸となって作ったカメラが「X-T1」だった。

そういう意味では富士フイルムのXマウントの将来を賭けて作ったカメラというのが「X-T1」でしたね。おかげさまで「X-T1」は非常に好評をいただきセールス的にも好調を記録したおかげで今がある。「X-T1」がなかったら、このインタビューはなかったかもしれない(笑)。そのくらい「X-T1」は印象に残っています。

フルサイズセンサーを検討していた時期はあるのか?とういう質問にも上野氏は詳細を語っています。

フルサイズはあえて選ばなかった デジタルなのだからフィルムの概念を引きずる必要はない

ちょうど「X-T1」を出したあたりにだんだんプロの方やハイアマチュアの方も " X " を使っていただける比率が増え、交換レンズも10本を超えだいぶシステムが充実してきました。そうなると当然もっと良い画質や大きなイメージセンサーの要望をたくさんいただだくようになりました。

APS-Cの新フォーマットをやるだけでも大きなチャレンジだったのに、Xマウントを始めて5年も経たない内にマウントを2つ持つのか? というところになると、社内で賛否両論があり、2つのマウントを展開しても我々の開発リソースが倍になるわけではないのでリソースが半々になりXシリーズの(開発)ペースが落ちるのではないか? とか、それはそれでマイナスになるのではないか? という色々な意見があったありました。ユーザーの要望も来る状態で、どうしようとなった。

ある一定のレベルまでは " X " で対応できるが、それ以上のところは他の会社のカメラを使ってくださいと言わざるを得なくなる。これは、富士フイルムの色が好きとか、コンセプトが好きと言ってくれる顧客にとって良くない事になる。やはりこのニーズに応えるべく、次のラインを出すべきではないかとなり、それが結果的に「GFX」に繋がった。

その時に " フルサイズ " をやるのか " ラージフォーマット " をやるのか、議論は相当長い間ありましたよ。

我々はフィルム・メーカーですから " 35mmフィルム " の魅力や万能性などは、おそらく誰よりも知っているメーカーなんですよ。ですが、あえてそこを選ばなかった。デジタルなのだからフィルムの概念を引きずる必要はない。フィルムメーカーなのにフィルムの概念を引きずる必要はないという発想を基に、それよりの一回り小さいフォーマットでも、それまでの35mmフィルムを遥かに超える、極論すればその上のブローニーフィルムだって超える事の出来る画質を達成する見込み、技術的な見通しが見えていて、だからこそデジタルに最適なフォーマットは何だというところから今の " X " の規格を選んだというところだと思う。

最後に上野氏がXマウント10周年を迎えるのにあたってメッセージを送っています。

Xマウント10周年 上野氏のメッセージ

10年間 Xシリーズのご愛用・ご愛顧いただきありがとうございます。Xマウント立ち上げから10年間、商品企画を担当させて頂いて凄くエキサイティングであり、色々なユーザー方と直接お話させていただいたり、マップカメラさんのインタビューに何回も出させて頂いて色んなメッセージを伝える事ができました。非常にありがたく思っています。

これからもXシリーズは、どんどん進化していきます。カメラってプロダクトはみんなそうですが、10年前と今とではカメラの機能は全然違いますし、皆さんがカメラに求める期待値もどんどん変わっていると思います。

それに対して変わらずに古いままでいる事が決して良い事だとは思っておらず、基本を忘れずに、でもちゃんとユーザーさんのニーズを掴んで進化させていきたいと思っています。是非どんどんXシリーズを使って写真を撮ってもらって、ショールームでもいいし、何か我々のイベントでもいいですから、どんどん我々をコミュニケーションして頂いて、結局 機械・機材を育てるのはユーザーの皆さんですから、末永く次の10年もお付き合い頂けたらなと思います。是非よろしくお願いします。

他にもXシリーズの源流である「X100」と「X-Pro1」の開発秘話など語っており、興味深い内容となっているインタビュー動画となっています。