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ニコン2021年3月期決算発表 映像事業は最終的に357億円赤字 今期通期見通しは50億円黒字

ニコンが、2021年3月期決算発表 (2020年4月~2021年3月) を行いました。最終的に映像事業は売上高 1,520億円、営業利益 ▲357億円に。映像事業の2022年3月期の通期見通しは、売上高 1,650億円、営業利益 50億円としています。

基本的に映像事業を中心に見ていきますが、まず最初にニコン全体の通期実績(2020年4月~2021年3月)を見ていきましょう。

ニコン全体の通期実績 (2020年4月~2021年3月)

  • 売上収益 … 4,512億円 (前年比 1,398億円減)
  • 営業利益 … ▲562億円 (前年比 629億円減)

ニコンは損益面で前回予想を上回ったとしていますが、前年比で売上が落ち、営業利益は▲562億円と赤字状態に。全体的に上期のコロナの影響が大きかった事を挙げています。加えて構造改革費用、固定資産減損や棚卸廃棄・評価損の一時費用556億円など計上しており、それを除けば営業赤字は限定的としています。

映像事業 通期決算 (2020年4月~2021年3月)

映像事業通期決算
販売台数
  • 売上収益 … 1,512億円 (前年比 756億円減収)
  • 営業利益 … ▲357億円 (前年比 186億円減益)

ここでも前回予想比から52億円増収した事をアピールしていますが、最終的に売上高も営業利益も悪化した事が伺えます。会社全体の赤字が▲562億円に対して、映像事業の赤字が▲357億円なので、全体の約6割ぐらいの赤字が映像事業によるものという見方も出来ます。決算資料の方に良かった事も掲載しており…

  • 市場縮小に加え、コロナ影響により販売台数は大幅に減少 プロ・趣味層向けモデルへのシフトを進め、販売単価は上昇
  • ミラーレスカメラを6モデル、ミラーレスカメラ用レンズを18本まで拡充、 ミラーレスはボディ・レンズ共に販売台数を伸ばし、増収
  • Q3に続き、Q4もカメラ市場の回復基調や当社ミラーレス新製品 Z 6II/Z7IIの販売好調が継続

このれまでの通りミラーレスに注力し、岩盤層と言われるプロ・趣味層向モデルへシフトする事で利益率を上げる方向性である事が分かります。Q3からQ4に掛けてカメラ市場が回復基調で、先に決算発表したカメラ・メーカーと同様にニコンも売上を伸ばした模様です。

カメラ&レンズ販売台数 (2020年4月~2021年3月)

  • レンズ交換式カメラ … 市場 552万台 / ニコン 84万台
  • 交換レンズ … 市場 991万本 / ニコン 135万本
  • コンパクトデジタルカメラ … 市場 343万台 / ニコン 26万台

何気に衝撃な結果で、レンズ交換式カメラの市場規模は 792万台 → 552万台 に減少しているのですが、ニコンは 162万台 → 84万台 と大幅に販売台数を減らしているのです。コロナの影響、半導体や素材・部品の供給不足、台数ベースではなく利益ベースへの転換など大きな原因はあると思いますが、販売台数が半減している事に関して個人的にビックリ。交換レンズも 265万本 → 135万本 に減少しています。

映像事業 2022年3月期 通期見通し (2021年4月~2022年3月)

映像事業通期見通し
  • 売上収益 … 1,650億円 (前年比 148億円増収)
  • 営業利益 … 50億円 (前年比 407億円増益)

映像事業は、営業利益が▲357億円から一気に50億円の黒字になると通期見通ししています。

  • コロナ禍からの回復により、デジタルカメラ市場は回復基調継続 レンズ交換式カメラ市場は前年比+5%拡大
  • プロ・趣味層向け製品の市場は堅調に推移。引き続き中高級機 カメラへのシフトを進める
  • 前年に続きミラーレスのボディ・レンズのラインアップをさらに拡充し、 ミラーレスを中心に売上拡大をはかる
  • カメラ・レンズ用各種部品(半導体関連を含む)の安定調達に注力

これまでの同じ戦略を継続していく事が伺え、今後もカメラ市場は回復基調である事を前提にしており、さらにZマウント カメラ&レンズを拡充していくとのこと。やはりニコンも半導体や各種部品の安定的な調達が課題になっている模様。

映像事業 中期計画

映像事業中期計画

プロ・趣味層向けミラーレスシフトはこれまでと同様ですが、フラッグシップボディの市場投入特徴あるレンズラインアップの拡充、 新たな映像表現につながるアプリケーション提供により、顧客満足度と売上の質を向上するとしています。

少し気になる表現があり「差別化強化に向けて十分な内外リソース投入」としており、外部リソースを投入する事を明言。

やはり売上1,500億円以下でも黒字を確保する構造改革を実行する事が伺えますが「前期までに2,000名以上の要員適正化、生産集約、販社再編など推進」という表現も。ニコンはすでにカメラ生産工場をタイに集約し人員削減を行い、国内でもレンズ工場を集約しましたが、また新たに何かあるのか気になるところ…。

今回の決算発表に連動してフラッグシップ機「Z 9」の情報更新に期待していたのですが、何もありませんでした。しかし今回の決算発表を見る限り「Z 9」は計画通り登場しそうで、特徴あるレンズラインアップを拡充すると明言しているので、もう5月ですが今年のニコンの動きに注目です。