パナソニック「フルサイズもMFTもラインアップを強化していく」
dpreviewが、パナソニック 山根洋介氏 インタビュー記事を掲載しました。今後のLマウントフルサイズ機・マイクロフォーサーズ機の方向性を中心に語っています。メール経由で行ったインタビューで記事にする上で分かり易くするために内容を構成しているとのこと。
長いインタビュー記事なので個人的に興味深かったポイントをピックアップしてみました。内容的に重要なところは大方フォローしていると思います。
このところフルサイズに注力しているが、今後のマイクロフォーサーズはどのような感じなのでしょうか?
- 我々は、すべてのクリエイターの撮影チャンス(機会・好機)をサポートすべく、フルサイズとマイクロフォーサーズ双方の製品ラインアップを強化したいと考えている
- 浅い被写界深度の静止画と動画をどんどん撮りたいクリエイターにはフルサイズを、小型軽量で機動力があり必要十分な被写界深度を望むクリエイターにはマイクロフォーサーズをラインアップしている
- キャラクターが異なる2つのシステムから成る製品群は、様々な撮影シーンをサポートし、クリエイターの創造力を映し出す ※「demonstrate : 示す・証明する」を映し出すと意訳しています
- 多くのクリエイターが新しいマイクロフォーサーズ新製品群に高い期待を寄せており、今後もラインアップを強化していく
この辺は、去年のインタビューと大きな差はない印象。今後もLマウント フルサイズミラーレス Sシリーズは注力されていく事が伺え、あとはマイクロフォーサーズの度合いがどのぐらいになるのか気になるところ。開発リソースには限りがありますから「GH6」以外のMFT機の優先順位が気になるところ。
レンズ開発において、フルサイズとマイクロフォーサーズの間で取り組み方の違いはあるのでしょうか?
- Sシリーズを立ち上げ、早い段階でラインアップを拡充する事を最優先しフルサイズレンズ群の開発に注力してきた
- Sシリーズはプロフェッショナルをターゲットにしており、我々は高いパフォーマンスを発揮し幅広い焦点距離をカバーするためにS Proレンズのラインアップを強化していく
- 去年「S5」をリリースした後に、小型軽量で高性能ながらもお値打ち価格の単焦点F1.8シリーズと20-60mmを導入しレンズラインアップを強化した
- マイクロフォーサーズ用レンズは、現時点で31本のレンズをラインアップしており、様々なシーンで有益(役に立つ)である
- 今後は、マイクロフォーサーズとフルサイズどちらで撮影するかに関わずクリエイターのニーズに合ったレンズを開発していく予定
パナソニックは、Lマウント用レンズ開発に注力しています。マイクロフォーサーズレンズはすでに31本ラインアップしていると語っているので、今後もマイクロフォーサーズ用レンズのリリースサイクルはゆっくりなのかもしれません。
競合他社が採用する像面位相差対してさらに対抗するためDFDの性能向上に取り組んでいるのでしょうか?
- AFは、常に進化し続ける技術である
- 「S5」は、クリエイターのニーズとフィードバックに基いてDFDアルゴリズムを進化させ、リリース後 市場からポジティブな反応を得ている
- けれども我々は、AFに関して言え万全な域に達するため改善する必要があると認識している
- 今のところ新しいハードウェアによる処理能力の向上、新しいソフトウェア・アルゴリズムによる精度の向上などさらなる改善を検討中である
今後も「DFD」で行きそうな感じ。個人的にパナソニックは、なぜ像面位相差を採用せず、DFD技術を採用したコントラストAFを採用し続けるのか、マーケティング的にその利点を市場に分かり易くアピールする必要があると思っているのは私だけでしょうか。
「S5」を使った事がないので最新のDFD性能を知りませんが、これまでマイクロフォーサーズ機「G8」「G9」を使用してきてマクロレンズと望遠レンズでガチ撮りした時にDFDの足が出るというか、DFDの苦手な部分が露呈してしまう気がします。私の撮り方や設定がダメな可能性はありますが、パナ機を使い始めてマクロレンズを使う機会が減りました。動画はAF固定で撮る事が多いし、普段使いでDFDで気になるところはあまりないのですが…。
センサーの読出し速度が高速になるとローリングシャッターが改善され、DFDも恩恵を受けるが、マイクロフォーサーズは、フルサイズよりも速度における優位性を提供していくのでしょうか?
- フルサイズ・センサーと比較してマイクロフォーサーズ・センサーは、高速読出しが容易で消費電力も少なくて済む
- これが動画機能を一歩先に進める事ができた理由の1つ
- 速度が速くなるほど、高速撮影性能が向上し、ローリングシャッターによる歪みが少なくなり、AF性能が向上するポテンシャルがある
- 今後もマイクロフォーサーズの高速なセンサー読出し性能のポテンシャルを活かし、我々のエンドユーザーに喜んでもらえる魅力的な製品をクリエイトし続けたいと考えている
次世代「GH6」の仕上がり具合に期待してしまう内容で、AF性能をはじめ動画撮影におけるローリングシャッターの影響がどこまで軽減されるのか注目があつまります。あとパナソニックはSシリーズに注力しているだけに、マイクロフォーサーズ機に対して出し惜しみする部分が出てくるのかどうか気になるところ。
パナソニックは、コンシューマー製品における " computational imaging / コンピュテーショナル イメージング " に関心を示しているが、市場の反応と将来的な発展と革新があるのか教えてください ※一般的にコンピュテーショナル・フォトグラフィ(計算写真学)と言われています
- 撮影後にピント位置を選択できるポスト・フォーカスと複数枚の写真を合成してピント位置の範囲を広げるフォーカス・スタッキングを採用したカメラ群を発表してきた
- これらの機能は、エンドユーザーに高く評価されている
- ハイレゾモードは、複数の写真を合成する事で高画素画像が撮影可能 (S1/S1H/S5 9600万画素、S1R 1億8000万画素)
- ハイレゾモードは、風景や建築撮影に携わるユーザーから評価されている
- 我々が、動画品質を向上させる上でコンピュテーショナルな手法を活用できるようになれば、さらなる可能性を生み出すポテンシャルを秘めている
- このところスマートフォンは、同様の機能を実装しつつある
- カメラにおけるコンシューマーのトレンドを実現する事で、さらに深い価値を顧客に提供し進化し続ける事になると考えている
dpreviewは去年ぐらいからこの手の質問をよくしています。この辺は、スマートフォンも積極的な感じで、スマートフォンはフラッグシップが1年に1回登場し進化が早いので、トレンドに遅れないようカメラボディにファームウェアアップデートで対応できる処理能力の余力が欲しいかも。
動画でコンピュテーショナルな手法は可能なのですか?
- 我々は、その可能性を否定する事はない
- 弊社のカムコーダーは、露光時間が異なる複数のイメージを基にHDRイメージを生成する機能がすでに搭載済み
- もう一方でハイエンドな映像制作においてミラーレス機が使用されるようになり、ポイントになってくるのは、市場で求められる品質を満たす事が出来るのかどうかと考えており、注視する必要がある
- 我々が、動画品質向上においてコンピュテーショナルな手法が活用できれば、さらなる価値を引き出す可能性がある
これまで " コンピュテーショナル・フォトグラフィ(計算写真学) " と言われるように静止画中心に進化し続けてきましたが、動画でもコンピュテーショナルな手法が活用可能なのでしょうか。パナソニックは否定しておらず、新たな価値観の創出に期待です。
近い将来、パナソニックカメラでRAW動画内部記録が可能になりますか?
- 今後の製品に関する事は、お答えできない
- しかし、もちろんRAW記録の需要は高まっていると感じているし、我々はそれを考慮し開発する必要がある
RAWはデータ量が大きいので内部記録をどう実現していくのか気になるところ。
CFexpressが採用され始めましたが、他のデバイスではSSD外部記録が始まりつつあり、動画においてどちらが最もフィットするのでしょうか?
- 興味深い質問であれるが、双方ともに強みがある
- ミラーレス機の機動性は、ボディ内のストレージによって最大限活かしている事は間違いない
- CFexpressは、そのポイントにおいて価値がある
- その一方で現在のCFexpressは、高速書き込み時に多くの電力を消費してしまう
- 静止画では問題ないが、動画においてカメラがヒートアップしてしまう可能性があり、撮影時間に制限が掛かってしまう懸念がある
- 我々の理想的なソリューションは、動画記録においてCFexpressようなカメラ内ストレージにあると思っている
- SSD外部記録は、内部記録が起因になる熱問題の解決方法の1つになる
- ただしUSB接続は、モビリティ(機動性)が必要な人にとって問題になってくる
- なので理想的なソリューションは、動画記録のためのCFexpressのような内部ストレージにあると考えている
- 特に長時間撮影時のCFexpressの消費電力低減などのイノベーションが今後起こる事に期待している
CFexpressは、高速書き込み時に多くの電力を消費してしまい、動画撮影時の " 熱 " にも影響を受ける事が伺えます。SSDも長所と短所があり、パナソニックとして基本的に内部記録が理想的なソリューションである事を明らかに。
パナソニックの顧客が、動画製品に求めている主要機能と改善点はどのようなものがあるのですか?
- 詳細をお答えする事はできないが、録画時間無制限記録や様々なアシスト機能など「GHシリーズ」や「S1H」の性能・機能面で高い評価を受けている
- LUMIX製品を使用している顧客から様々な方法で多くのフィードバックを得る事が出来ている
- 今後も顧客の声に耳を傾け、彼らが抱えているかもしれない問題を解消していく
- 今後も機能を磨き、高ビットレートや高フレームレートなど動画表現を広げ、技術で業界をリードしていく
- 顧客に満足してもらえるカメラをクリエイトし続ける
近年の市場の傾向は? コンパクトカメラ市場はまだありますか?
- デジタルカメラのグローバル市場はコロナの影響を受けたが、ここ最近は回復しつつある
- しかしながらコンパクトカメラ市場は縮小中
- 一方でミラーレスカメラの需要は、特に動画制作やライブストリーミングなどで着実に高まりつつあり、需要も多様化している
- このような状況化でミラーレスカメラの役割は大きくなっていく
- 我々はこれに対応するために、フルサイズとマイクロフォーサーズ双方を強化する
- 2020年は、フルサイズながらも小型軽量ボディでプロに認められた機能を搭載した「S5」をはじめ、マイクロフォーサーズではVlogger用の「G100」やボックスカメラ「BGH1」を投入し需要と多様化に対応し、ファームウェアアップデートにより迅速に市場に対応してきた
スマートフォン世代の顧客にパナソニックのカメラを手にしてもらうのにどの様な計画を立てているのでしょうか?
- 我々は、世界中の人々がスマートフォンを所有し写真や動画撮影しそれを共有する時代に生きている
- スマートフォンのカメラ性能は向上しつつあるが、スマートフォンが出来る事には限界がある
- デジタルカメラを使用する事により、スマートフォンとは明らかに違う表現力豊かな動画・静止画が撮影可能に
- 将来的なカメラ市場存続のキーとなるのは、多様化するニーズに迅速に対応する事である
- 若い世代で映像制作が盛んになっており、低価格で使い易いミラーレスカメラが注目されている
- さらに加えて、クリエイターはよい高度で独自性(ユニーク)あるイメージを撮影したいと考えている
- このニーズに応え、カメラとスマートフォンの親和性を高める事で、若い世代にもデジタルカメラを手に取ってもらいたいと考えている
- この先 カメラ市場を生き抜くキーとなってくるのは、多様化するニーズに迅速に対応する事である
多様化するニーズに迅速に対応する事がキーとなると何度も語り、今後のパナソニックの製品展開に期待。カメラ市場が縮小しつある中、各メーカーは利益率の高いカメラ&レンズを投入する事が主流になっていますが、若い世代で映像制作が盛んになりつつあり低価格で使い易いミラーレスカメラが注目されていると語っているので、パナソニックは戦略的なモデルを計画しているのでしょうか。
「S1/S1R」が発売され2年が経ちましたが、どのように受け入れられました?
- 「S1」と「S1R」は、プロ写真家やハイブリッド・ユーザーのために開発された製品であり、あらゆる面で妥協する事なく開発されている
- 市場において、パフォーマンス、操作性、堅牢性などなどプロの仕事道具として高く評価されている
- 画質の点では、特に色再現性が高く評価されている
- 一方でAF性能の向上を求める要望が多く寄せられた
- AFトラッキングに関して「S5」でアップデートを行い、去年の11月にファームウェア経由で「S1R」と「S1」も改善している
マイクロフォーサーズの軽さに慣れ切ってしまった自分は、発売時「S1/S1R」を店頭で初めて手にした時、思った以上にデカ重で心が折れてしまいました…w もちろん「S1シリーズ」は私のような軟弱なライトユーザーに向けたフルサイズミラーレス機ではなく、仕事で使用している硬派なプロフェッショナルからは高い評価を受けているようで、パナソニックの狙い通りではないでしょうか。
パナソニックは、フルサイズミラーレス市場における最大で最も堅牢性あるミラーレスをラインアップしていますが、競合他社との大きな差異と考えているのでしょうか?
- 我々は、プロフェッショナルのために開発された「Sシリーズ」と競合他社の製品との大きな違いは、動画連続撮影時間が良い例で(機能面の)耐久性と堅牢性にあると考えている
- また " IBIS " や " シャッター " の精度にも注力している
- UIは、多くのプロフェッショナルとやり取りした上で作り上げており、優れた使い易さを実現している
編集後記
インタビューを行ったdpreview : Barney Britton氏は編集後記で、パナソニックがAF性能周りに改善の余地がある認識がある事と、フルサイズだけでなくマイクロフォーサーズ双方強化していく事をコミットメントした事を大きなポイントとして挙げています。