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パナソニック「すでに未来のカメラの企画検討は始まっている」「今後のLUMIXに期待」

CineDが、パナソニック LUMIX 商品企画 香山正憲氏 インタビュー動画を公開しました。個人的に興味深かったポイントをピックアップしてみました。香山氏は、歴代GHシリーズの商品企画をはじめ「S1H」の商品企画を担当した人物になります。

LUMIX 商品企画部門は11名在籍している

商品企画部門としては総勢11名おり、私の監督下では4名のエキスパートがいる。全員日本におり大阪に開発拠点がある。開発設計を行う部門と密なる連携を取るために我々商品企画部門も大阪で業務を推進しています。

GH6の開発期間は約5年

カメラの開発期間は、開発するカメラの新規性や要素技術を確立する難易度に依存するところが大きい。特に「GH6」は、イメージセンサーや画像処理エンジンなどの新開発の要素がたくさんあるモデルで、要素開発期間を含めると約5年の歳月をかけている。個人的な感覚であるが、昔と比べて開発期間は長くなっていると感じています。

加えて顧客のニーズや要求に応える技術の難易度の高度化を要因の1つに挙げ、次の後継モデルを立ち上げる前に現行モデルの成果を総括する期間も設けているとのこと。その期間に市場トレンドの変化や顧客のニーズやインサイトを洞察し次の一手を定めていく模様。

GH6の需要は想定上

「GH6」の発売から半年が経過し、想定上の需要をいただいており大変嬉しく思っている。一部地域のバックオーダーも解消し安定供給出来るところまできた。販売台数は言えないが、GH6に支えられ2021年度Q4 (2022年1月~3月) のLUMIXイメージング事業は二桁成長を達成する事ができました。

AFシステム

「GH6」の開発においてAFは非常に強化すべき点と考えており、像面位相差AFを含めたあたらゆる可能性を検討し続けてきた。しかし「GH6」のタイミングにおいて提供可能な画質レベル、新エンジンによるAFテクノロジーなどの進化の度合い、技術的な要素、顧客に提供可能な開発タイミング、価格などの要素のトータルバランスを取り、その結果「GH6」は像面位相差方式を採用していない。

将来に向けて " 像面位相差方式 " を含めてあらゆる方式の可能性を検討し続けている。重要な事は、実用的なAF性能に向けて進化し続けていく事、(開発の)手をとめない事であると考えている。この取り組みは続けていきたいと考えている。

新エンジンにより被写体認識アルゴリズムを徹底的に進化させているとのこと。被写体の検出速度アップだけでなく、自動認識アルゴリズムも進化しているそうです。コントラストAF(DFD)の背景抜けの改善も施している模様。

内部ND(フィルター)システムを搭載するにはブレイクスルーが必要

解決すべき技術的な課題があり、センサーのイメージクオリティを最大に発揮するには物理フィルターが無い素の状態である事が理想的で、撮像面に近い位置のフィルター構成はイメージクオリティに及ぼす影響があり注意深く設計する必要がある。何よりもフィルターを使用しない時のスペースについては、かなり頭を悩ませるポイントではいかなと思う。ミラーレスカメラの最大の長所はカメラサイズだと思うので、そのリスクというものがあるのではないかと…私が思うだけでもこれだけの課題がある。

この課題を解決するためには、イメージセンサー、画像処理技術、フィルターデバイスの構成など様々なエレメントがあると思うが、それをブレイクスルーするようなアイディアが一歩二歩必要に感じる。当社として様々なアプローチの可能性をしっかり検討していければと思う。

MFTとLマウントの技術は共有している

イメージセンサーとマウントに差はあるが、それ以外の要素 画像処理エンジン、ジャイロセンサー、手ブレ補正アルゴリズム、ファインダー、モニタ、ワイヤレスモジュールなどのコンポーネントやソフトウェアの部分はほぼ共有化している。これによって両カメララインの画作りやユーザーインターフェースの一貫性を保つことがLUMIXカメラとして出来ている。特徴が異なるカメラシステムの改善をお互いが供給し合い導入する事によって、さらに改善し高性能化する事に貢献できていると思っている

小型なカメラ要望の声は我々に届いている ※オリジナルGH1のようなポケットサイズカメラの計画はあるのか?という質問に対して

今後の新商品計画について明かす事は出来ないが、小型なフォームファクターカメラを求める声は我々にも複数届いている。ディレクターズビューファインダーが使えるようなカメラやシネマティックなVlogを気軽に撮りたい声も実際にあり、これらのニーズに応えるために「G100」のようなフォームファクターのカメラを進化させていくことが有力な方法の1つであると感じている。

しかし非常に小型なカメラサイズと高性能なビデオパフォーマンスは熱処理において表裏一体でトレードオフの関係ある事は事実であり、ブレイクスルーしなければならない課題がいくつかあると予想します。これについても当社にとって次の一手であり、どうのような解決手段があるのか引き続き検討していきたいと思っている。

すでに未来のカメラの企画検討は始まっている LUMIXの次の一手を期待して欲しい

GHラインの今後の展望を明かす事はできないが、GHシリーズのコンセプトとして映像制作の現場で " 真実 " がいるカメラを基本としながらも人とは違うワンランク上の映像表現を可能にする、そういうカメラを目指す考え方は不変である。これからも大事にしなければならないと思っている。

競争が非常に激しいカメラ業界ではあるが、いつの時代も顧客のクリエイティビティに寄り添い幅広い映像制作の用途の中で実用的であり続ける事がGHシリーズの目指す姿と思っている。RAW内部記録などのRAWソリューションやクラウドベースのストリーミングなどのトレンドの兆しがあり、その他にも様々なUXの兆しがありGHシリーズとしてどういった価値を提供できるのか、業界のトレンドや顧客のインサイトに着目し次の一手を絞っていきたい。

すでに未来のカメラの企画検討は始まっている。クリエイターの皆様と共に進化していく " LUMIX " を今後もご期待していただければと思っている。

春先に「GH6」が登場し話題となりましたが、2022年後半にLマウント 新型カメラが登場してくるのか気になるところ。「GH6」と同じ世代の新型MTF機の動向や、Lマウント Sシリーズの次世代機の動向も注目です。