ソニー「競合他社は気にしていない。大切なのは顧客。」インタビュー記事
dpreviewが、フォトキナ 2018 ソニー 田中健二氏 インタビュー記事を掲載しました。競合他社は気にしておらず、大事なのは顧客であり、顧客の要望に耳を傾け期待以上の製品をクリエイトしていくと語っています。
さらに効果的に取り込めると感じる顧客層は?
- 写真フィールドにおいて多くの顧客が存在し、彼らすべてに製品をクリエイトしたい
- 最近、スポーツフォトグラファーに向けて製品は発売済み
- これは一例に過ぎず、1つ1つ拡大していきたいと考えている
ソニーにおける独自性は何でしょう?
- 世界最大のイメージセンサー・メーカーであり、多くのユニークなセンサーを開発している
- α9に搭載した積層型CMOSセンサーが良い例で、ユニークかつ革新的な製品であり、競合他社と比べた時の強みとなる
- α9が搭載する積層型CMOSセンサーはF1カーのエンジンのようなもので、エンジンだけでは車は動かず、マシンを上手くコントールするには良いタイヤ・良いシャシー・良いドライバーが必要となってくる
新しい競争力のあるフルサイズミラーレス機の登場は、あなたの計画にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
- 市場に動きが出る事は歓迎
- 我々のビジョンは、顧客をデジタル一眼レフ(DSLR)からミラーレスに移行させる事ではなく、市場を拡大させる事にある
- キヤノンとニコンのフルサイズミラーレス市場参入のインパクトがどのようなものになるのか私には分からないが、我々は新しい顧客の創造に注力し続ける
- それが最優先事項であり、正直言って競合他社は気にしていない、顧客こそが大事なのである
- 顧客が、さらなる機能、さらなる品質が必要ならば、それを実現したいと思っている
競合他社の発表で驚いた事はありますか?
- いいえ、本当にないのです
- キヤノンとニコン、そしてパナソニックさえもフルサイズミラーレス市場に参入する事は予測していたので、驚く事はなかった
- しかしカメラの革新について考えれば、あらゆる企業が市場に参入すべきで、そうなれば革新するチャンスが大いに増える
- ミラーレスには、レンズ・画像品質・スピード・バッテリーライフなど5つの基本的な条件がある
- その中で小型軽量化は、どの競合他社も改善しようとしている領域で、現時点でソニーが良い位置にいると考えている
フルサイズより大きなセンサーに対する顧客の需要をどうお考えですか?
- 現在フルサイズセンサーですべき事が多く存在し、現時点でより大型なイメージセンサー(を搭載したカメラの)開発を開始する考えはない
FE 24mm F1.4 GMで撮影を楽しんでいるところですが、このラインアップで、小型なレンズをさらにクリエイトする予定は?
- もちろん予定しています
- 一部の顧客は、高品質で小型なレンズを求めているので、ターゲットの1つなのです
新しいAPS-Cレンズ群は予定していますか?
- はい、APS-C市場は我々にとって大きな市場である
- ここ最近のレンズはほとんどフルサイズだったが、APS-Cも引き続き重要なターゲットである
- APS-Cの利点は、モビリティそして使い易さにある
APS-Cの長期的な戦略は? デュアルダイヤルを採用したNEX-7的なカメラが登場するのでしょうか?
- 顧客からフィードバックする必要があり、NEX-7のデュアルダイヤルは評価した顧客もいたし、評価しなかった顧客もいる
- APS-Cは重要な市場だけに、APS-C市場に新しいモデルをクリエイトするが、顧客がどのようなモデルを求めているのか聞く必要がある
今後 APS-Cが、プロフェッショナルフォーマットになる可能性は?
- 多くのプロ機があり、もちろんメインはフルサイズ機になるが、長い間彼らはサブ機としてAPS-Cを使ってきた
- もちろんAPS-Cプロ機は必要である
APS-Cとフルサイズのデザインアプローチに違いはありますか?
- いいえ、我々の戦略はユニークなのです
- 例えば、顧客であるAPS-CユーザーがFE 24mm F1.4 GMを使用する事もあるので、我々のレンズ設計はすべてのタイプのモデルで一貫性がなければいけない
- APS-Cユーザーもフルサイズレンズを購入しているのです
ソニー使いの中には防塵防滴仕様を望む声があると思いますが、取り組んでいますか?
- はい、もちろん
- 多くの顧客から聞いていて、取り組んでいるところである
フルサイズミラーレス機は、より利用し易いように、価格を下げる必要があると思いますか?
- 価格戦略について話す事はできないが、顧客数を増やしたい場合は必要となってくる
- しかし2000~3000ドルの価格が受け入れられる時と、そうでない時が出てくる
- 最近のα7 IIの価格は1000ドル前後なので、我々の顧客は(ラインアップ的に)フルサイズにおける幅広い価格帯に満足していると考えている
- いつかα7 IIIの価格は下がり、誰もが買い易い価格になると思う
- 多くの顧客がα7 IIIが欲しいわけだが、(買い易い価格になるには)時間が掛かる
なぜソニーは、SDカードにこだわっているのでしょうか?
- メモリーカードのパフォーマンスは、画像処理速度と密接な関係がある
- 今のところ処理速度は、SD UHS-IIよりも遅いのでSDカードでOKなのです
- しかし今後、8K 30pに対応したビデオカメラが登場してきた場合、SDカードで役不足になる
- しかし今のところSDカードで充分なのです
- 最近厳しい環境に耐えられる SD " tough " カードを発表した
デュアルカードスロットを採用する理由は?
- 多くの使い方がある
- 1枚はバックアップ用として、Jpeg/RAWの振り分けなど、デュアルカードスロットは顧客にとって非常に便利であると考えている
- 一部の顧客はシングルスロットで大丈夫と考えているが、我々のリサーチでは、多くの人がデュアルカードスロットを望んでいる
サードパーティ製レンズメーカーは、ソニーの長期的な成長においてどのぐらい重要ですか?
- 知っての通りEマウントはオープン規格です
- もちろんそこには競争がありますが、顧客が多くの高品質なレンズ群から選ぶことが出来れば良いと思う
- サードパーティ製レンズメーカーとは契約を結んでいて、そのメーカーに仕様を公開している
- ソニーは、マウントの仕様を公開するのみで、レンズ設計に口を出す事はない
すべてのカテゴリーで4Kが標準化しつつあり、α7S IIが投入されてからかなり時間が経ちますが、この市場セグメントに興味をお持ちですか?
- はい、もちろん
- α7S IIユーザーは良い作品を創りたいと考えているので、その要求に応えるべく、後継機の投入を考えている
- しかし期待以上の機種に仕上げる必要があり、現在Sモデルは計画中であるが、時間が掛かる
- α7S IIユーザーは、4K 60p 4:2:2 10bitを望んでいて、もちろんバッテリ―ライフやAF精度も改善したい
α7S II 後継機は、ハイブリッドカメラである必要があるとお考えですか? もしくはビデオカメラ専用になる可能性は?
- 個人的な経験から言わせてもらうと、α7S IIは良好なスチルカメラである
- 画素が非常に大きいので、ダイナミックレンジは非常に広い
- 私が思うにスチルカメラの機能も求められていると思う
将来的にAIがソニーカメラで多くの役割を果たすとおっしゃいましたが、詳細を教えてください
- 正確な事はお伝えできないが、AIは多くの顧客にとって有益だと感じている
- 現在既存モデルへのアップグレードを計画中
- もちろんAI機能を採用した新モデルも計画している
- カメラは撮り手をサポートする必要があり、フォーカス操作や他の操作の必要性を取り除きたい
- AFに関して言えば、AIの開発にかなり専念している
ニコンとキヤノンがフルサイズミラーレス市場に参入し、パナソニックも開発発表を行いここ数年で一番盛り上がったフォトキナになりましたが、ソニーは大きな発表を行いませんでした。世界市場でみるとソニーは大きなシェアを獲得しており、競合他社の動きは気にせず、顧客の事を考え独自路線で開発していく事を示唆したインタビュー記事となっています。