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Nikon IR Day 2022 質疑応答でストレートな質問に明確に答えるニコン

先日ピックアップしたニコン Nikon IR Day 2022 のノート付き資料が公開され興味深い文言が掲載されています。加えて Nikon IR Day 2022 の質疑応答も公開され興味深い内容となっているので見ていきましょう。

ミラーレスにおいては、レンズを50本以上に拡充することによりシステムとしての完成度を⾼めるとともに、好評をいただいているフラッグシップ機Z 9で実現した先進機能を他機種にも展開する計画です。※Nikon IR Day 2022 (ノート付き) より

「Z 7III」や「Z 6III」に「Z 9」の先進機能が降りてくるのか、新たな機種が登場するのか分かりませんが、どうやら「Z 9」で実現した機能が下位機種に展開しそうです。2022年下期~2023年あたりに登場してくるZカメラに期待です。

以降は本題である Nikon IR Day 2022 の質疑応答の内容になります。ストレートな質問に対して明確に答えた質疑応答な印象。

Q︓ レンズ交換式デジタルカメラの2025年度70万台の見通しのうち、ミラーレスの比率はどのぐらいか。2021年度のミラーレス比率もあわせて教えてほしい。

A︓ 2025年度の売上は9割程度になると見込んでいます。2021度は6割程度でしたが、今期は8割程度を計画しており、着実に伸ばしていきます

前回ピックアップした内容の詳細を語っており、2025年度のミラーレスと一眼レフの売上比率は " 9:1 " になると見通している事を明らかに。

Q︓ 注力する中高級機市場において、今後は若年層を含む幅広い層からの支持を獲得していくとなると、競合との競争激化も想定されるが、貴社の優位性はどこにあるのか︖

A︓ 一つは商品力です。当社はミラーレスで出遅れたと言われていましたが、エンジン・センサー・AF等のシステムをゼロベースで開発することで競合より半歩先に出ることができました。また顧客視点で商品開発を進める習慣が根づき Z 9 の成功に結びつけることができました。このような企業文化や技術力は当社の強みです。 また、マーケティング活動もこの2年ほどリアルとデジタルのタッチポイントを拡充し認知度を上げ、購買後にも顧客満足度を上げる活動に取り組んでおり、確実にニコンファンを増やすことに繋がっています。新規ユーザーの取り込みについては、特に若年層に注力しており、マーケティングアプローチも SNS やキーオピニオンリーダーの発信等を活用し、非常にポジティブな成果が表れてきています。例えば Z 9 の中国のローンチイベントでは1都市で約500名に参加いただきましたが、その8割が30代以下かつ動画目的のユーザーでした。既存ユーザーだけでなく新しいユーザーを獲得するマーケティング活動をさらに進め、ユーザー数を伸ばしていきます

Zカメラの基礎となる描画エンジン・イメージセンサー・AFなどをゼロベースで開発した事を明らかに。ニコンは若年層の取り込みに注力しており、中国ではその効果がカタチとなって現れている模様。カメラ市場においてマーケティングと言えば " キヤノン " を連想するユーザーさんが多いと思いますが、ニコンがマーケティングでどこまで若年層の新規ユーザーを獲得していくのか注目です。

Q︓ プロ・趣味層向け市場における台数シェアは、2025年度には、2021年度から5ポイントほどシェアを上げ、 23%程度となる計画のように思われる。他社もプロ・趣味層向けに注力している中、目標達成の蓋然性 は︖

A︓ 元々一眼レフでしっかりシェアが取れていた事もあり、シェア向上は十分に狙えると考えています。前期に投入した Z9 や Z fc の好調に加え、今後新たに中高級機ゾーンの機種を投入し、今期レンズ交換式カメラ の9割が中高級機に置き換わる前提で計画しています。また、レンズのラインアップは、現状30本のところ を、2025年に向けて50本以上まで拡充していきます。プロ・趣味層においても様々な撮影シーンやワークフローへのニーズがある中、しっかりと要望に応えられるレンズを提供し、レンズとボディの相乗効果でシェアを獲 得できると考えています

現在ニコンはミラーレス市場においてシェアは限定的と言われていますが、シェア向上はいくぶん楽観視しているように感じる質疑応答に。元々一眼レフでしっかりシェアを取れていたからミラーレスでも取れる考えの模様。

中級機ゾーンに新型機を投入する計画である事も明らかに。ラインアップ的に9割が中高級機に置換わる計画とのこと。個人的に「D850」直系の後継機にあたるZカメラの登場に期待してしまいます。

Q︓ 以前は、フルサイズミラーレスで No.1 を目指すという発言もあったように思うが、利益と台数シェアはどちらを 優先するのか教えてほしい。

A︓ シェアは KPI として重要であるものの、いたずらに数を追うのではなく、計画した製品・数量を提供し、価値を分かってもらい買っていただきたいと考えており、結果的には収益を優先してまいります。

ニコンがZマウントを立ち上げた時にシェアNo.1を目指すアナウンスがありました、映像事業は赤字に陥り紆余曲折があり前年度でようやく黒字転換し、数よりも収益性を優先させる方向性を再び示しています。

Q︓ 研究開発費の考え方について、売上収益は大きく伸びない中、今後レンズを50本以上に増やすということだが、今後の研究開発費の水準をどのように考えているのか︖

A︓ 研究開発費は、この先相応に必要と認識しています。市場での競争力を担保するためには、差別化技術に研究開発費をしっかり投入する必要があり、2025年度までおおむねフラットで推移する計画です。なお、成長ドライバーである映像コンテンツにかかわる研究開発費は全社損益の成長投資関連費用として計上され ます

ニコンは4月に発表した中期経営計画でZレンズ50本以上レンズラインアップを拡充する事を示唆しましたが、今後も研究開発費はしっかり投入していく方向性であり現時点の研究開発費を2025年度まで維持していく事を明らかに。

Q︓ 動画のニーズが増えているが、ビデオカメラやアクションカメラなど動画を撮る機能をもつ製品は多々ある。その中でレンズ交換式カメラの動画市場での位置づけや、レンズ交換式カメラの良さを教えてほしい。

A︓ レンズ交換式カメラ(特にフルサイズ)はセンサーが大きく、表現力が非常に大きいことが特徴です。今までの動画機材は小さいセンサーで比較的パンフォーカスが主流でしたが、最近は特にSNS等のプラットフォームの拡充によって、よりエモーショナルな特徴ある動画を撮りたいというニーズが増えています。そのため、センサーサイズが大きく、かつレンズの選択肢が多い点にお客様のニーズがあると考えています。

今後もニコンはフルサイズを中心に製品展開を行っていく事が伺える答弁となっており、今後レンズ交換式のVlogカメラなども計画しているのかどうかも気になるところ…でもラインアップ的に9割が中高級機に置換わる計画を立てているので、ソニーのような製品展開は計画してないように感じます。

Q︓ プロ・趣味層向けに集中する中で、プロと趣味層のそれぞれの割合と、それらがどのように増えていくのかを教えてほしい。

A︓ プロと趣味層の正確な比率は捉えていませんが、趣味層の方が圧倒的に多いと認識しています。なお、映像をアップロードすることを生業にされている方はクリエイターと捉え、プロという領域では捉えていません。プロもしっかり支えつつ、その影響力を趣味層に波及させていく戦略を取りたいと考えています。

要はYouTuberやインフルエンサーなどはクリエイター枠でプロとは違う領域と考えており、ニコンにとってクリエイター領域は趣味層へのマーケティングといった感じでしょうか。

Q︓戦略上のプライオリティや運営の仕方など、池上事業部長が就任されてからどこが変わったか︖

A︓体制については、まずは構造改革の完遂が最重要課題であったため、それをしっかり実行できる体制を構築するとともに、極力フラットな体制にし、直に指示が届き、コミュニケーションが密になるように改善しました。さらに、経営トップとしっかりコミュニケーションをとり、経営とコンセンサスを得た上で事業運営をしており、これらが 大きな違いと考えています。

ニコンは1,500億円の売上でも営業利益が黒字になる構造改革を数年掛けてやり遂げましたが、今回の質疑応答見る限り以前は風通しが悪い組織だった事が伺えます。

Q︓主な顧客がプロ・趣味層となる中で、今後どのようなチャネルで売っていくのか、方向性を教えてほしい。

A︓チャネル戦略は、たくさん製品を並べて大量に販売するというやりかたではなく、専門知識を持ったチャネルを中心に展開していく方針であり、既に2年ほど前からシフトを進めています。現状コロナの影響もあって直販比率も上昇しています。顧客との直接のタッチポイントとして重要と考えており、今後も強化していきます。

何となくペンタックスの方針に似たような方向性にも感じます。