ソニー「α1は次への10年に向けた最初の一歩」「今年は、他にも新型カメラを予定している」
dpreviewが、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの コンスーマー&プロフェッショナルビジネスセクターカメラ事業部 部長 大島正昭氏「α1」インタビュー記事を掲載しました。
「α1」の開発期間はどのくらい?
- それに答えるのは非常に難しい
- 正確な開発期間を伝える事はできないが、既存モデルよりも時間は掛かっており、開発はかなり大変だった
- 大きな理由は、まったく新しいイメージセンサーを搭載した事
- 新センサーは途方もない仕様を実現しており、センサーのパワーを最大限に引き出しカメラに収める事は非常に大変で、長い期間を要したのである
- 最初からプロフェッショナル向けに開発
- 静止画と動画撮影者双方の期待を上回るカメラを目指し開発しており、「α1」はトップ・プロフェッショナルのために妥協なきカメラに仕上がっていると私は思っている
プロ市場におけるソニーユーザー拡大のための包括的な戦略は?
- 常にプロの顧客からフィードバックを得ており、それを開発に反映している
- 今のところ良好関係にあり、今後のその関係を持続・発展し、彼らのフィードバックを基に製品とサービスを作り上げていく
- 彼らは、我々が考えた事もなかった事のヒントをくれる事もある
- 一度プロが「α1」を使用すれば気に入ってくれると思う
8K動画機能対応は、最初から計画していたのでしょうか?
- はい
- 静止画と動画の垣根はなくなりつつあり「高品質な動画」と「高解像な静止画」を同じボディで実現する事を目指した
- 今のところ8Kは広く普及していない状況だが、需要が高まると思っており、今後我々が成功するために8Kの実装は非常に重要である
- 一部のプロは、8Kで撮影し、4Kクロップ(オーバーサンプリング)する事に興味を抱いているだろう
- 「α1」は、次への10年に向けた最初の一歩だと考えている
- 「α1」という製品名には " 最初の一歩 " という意味も含まれている
コンシューマー向けカメラにグローバルシャッターを搭載するお考えは?
- ソニーは、すでにグローバルシャッター搭載イメージセンサーを発売している
- 小型センサーでセキュリティカメラ・防犯カメラ・マシンビジョン・プロ仕様カムコーダーなどに搭載されている
- グローバルシャッターのメリットは承知しているが、フルサイズで使用するには設計・エンジニアリング・生産において課題がいくつか存在する
- なので現時点において新センサーを搭載した「α1」が、最も現実的なカメラなのです
「α1」搭載センサー非常に高速ですが、メカニカル・シャッターも搭載した理由をお聞かせください
- そう言ってくれる事を嬉しく思う
- しかし充分速いは言えず、トップフォトグラファーは1/300秒より高速なフラッシュ同調速度を必要としている
- そこで、バネに加え電磁駆動アクチュエーターを搭載したまったく新しい構造のデュアル駆動式シャッターを実装した
- ※「α1」のフラッシュ同調速度は1/400秒
この他にも「α1」のためだけに新しく開発した技術は?
- センサーとシャッターはまったく新しく「α1」独自のもの
- 描画エンジン(BIONZ XR)とEVFは「α7S III」と同じであるが、パフォーマンスを最大限に引き出す最高のチューニングを施し搭載している
「α1」ボディ構造について教えてください 既存モデルとどこが違うのでしょうか
- 依然マグネシウム合金ボディを採用しているが、パーツの組み合わせ方より剛性を高めている
- シーリング(防塵防滴)は既存モデルとまったく異なり、詳細はお教え出来ないが「α7S III」と「α1」はまった新しいボディ構造を採用しており、非常に高度なシーリング技術を使用している
「α1」は最高の仕上がり、最高の耐久性があるカメラ?
- もちろん
- レンズ交換時にシャッターが閉じる機能を追加し、プロの使用に応えるべく耐久性は向上している
- メカニカルシャッターを採用したもう1つの理由でもあるのです!
高速化と高解像化 双方を実現させる事は難しいと考えられてきましたが、「α1」はどのように高速化・高解像化を実現したのでしょうか?
- 新しいセンサーを開発する必要があり、最新のイメージング・プロセッサとまったく新しいADC(A-Dコンバータ)を搭載している
- それにより高速化と高解像化を実現している
- 申し訳ないが、これ以上は詳細を明らかにできない
将来的に「α1」に " コンピュテーショナル・フォトグラフィ(計算写真学) " 機能を導入する計画は?
- dpreviewが、コンピュテーショナル・フォトグラフィに感心を寄せている事は知っている
- 「α1」には搭載されていないが、ピクセルシフト撮影や長時間撮影時のノイズリダクション機能などは搭載しており、この辺の機能は同じ様なアイディアに基いている
- 今のところ顧客からオリンパスのプロキャプチャーモードのようなコンピュテーショナル・フォトグラフィ機能の要望はない
- そのフィードバックを得る事になれば検討する可能性はあるが…何も決まっていない
ソニーにおけるAFに関する次なる方向性は?
- AF機能を向上させてきたが、まだ改善の余地はある
- 今ある機能を強化し続けるが、被写体やシーン認識においても開発を継続する
- それがキーとなる事だろう
コンシューマー向けのデジタルイメージング市場において対応し切れていない最大のニーズは?
- 動画の需要、若いクリエイターのニーズに対応し切れていない
- コロナが我々すべての環境を変え、顧客の要望もオンラインに
- 若いクリエイターの創造性、彼らの画像品質向上への想いは止まる事はない
- 彼らの要望は加速しているのです!
- 我々は対応し切れておらず、なので「ZV-1」の様な機種を投入したのである
若いクリエイターにソニーのエコシステムを導入してもらう戦略は?
- 彼らは高品質な画像や動画を撮りたいと思っているが、使いこなせていない可能性がある ※軽く意訳しています
- キーとなってくるのは、我々の高度な技術をシンプルで使い易い仕様に仕上げる事にある
- 「α1」のために開発したハイエンド・テクノロジーは、手を加え簡素化し「ZV-1」の様な製品群に実装される事となる
2021年 ソニーのカメラ部門における最大の課題は?
- 最初のミラーレス機を開発し10年になるが我々は主導権を握った立場におり、今後もミラーレスカメラ開発に注力し続け、市場を大きくしていく
- それが我々の最大の課題であり、この地位を維持する事になる
- 我々は「α1」だけでなく、今年は他のカメラ(複数)のローンチを予定している
- カメラだけでなくレンズにおける革新と開発は、決して止まる事はない
- 最高の体験を提供し続ける事により、我々はこの業界のリーダーになる事を目指している
ソニーの自信と意欲を感じるインタビュー記事となっています。「α1」はスピードと高解像を実現したフラッグシップ機であり、静止画と動画の垣根が無くなりつつある中 満を持して投入してきたフルサイズミラーレス機と言えるのではないでしょうか。将来を見越して8Kに対応し、どうやら耐久性は「α7S III」以降新たな構造を採用してきた事が伺えます。
今年は「α1」以外にも複数の新型カメラの投入を予定している事を明らかにしているので、例えば「α7 IV」などさらなる次世代機が続々登場してきそうな気配です。
今回のインタビューでソニーは「市場を大きくしていく」と語っていますが、ソニーがあまりにも一人勝ちしてしまうと市場における競争原理が働かなくなるので特にキヤノンとニコンの踏ん張りに期待。三つ巴で市場が広がる事に期待です。
ちなみにマップカメラの決算発表によると "フルサイズミラーレスへの本格移行 " が始まっています。今年は、岩盤層と言われる顧客の取り合いになるかもしれません。