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タムロン 決算発表「カメラが売れていかないと交換レンズも伸びていかない⾯もある」

タムロンが8月4日に2020年12月期 第2四半期 (2020年4月~6月) 決算発表を行いました。やはりCOVID-19の影響で2020年上期の写真関連は前年同期比で68億円の減収となりましたが黒字を確保。通期でも黒字確保の見通しで、質疑応答で個人的に興味深い発言がありました。

今回の決算発表資料は、第2四半期というより第1四半期を含めた2020年上期実績という印象。加えて通期見通しも示唆する内容となっています。先に質疑応答資料に掲載されている興味深い発言から取り上げてみようかと…。

写真関連の⾃社ブランド新商品である A071 はレビューなどを⾒ると⾼評価であり、得意の⾼倍率の強みを活かした商品だと思うが、この商品があっても下期の写真関連事業は減収になってしまうのか︖

A071 は当社が世界初の⾼倍率ズームレンズとして発売して世界的な⼤ヒットと なったモデルと同じ焦点距離の 28-200mmの⾼倍率ズームであり、発売してから好評をいただいており BO も若⼲あるが、それよりも市場環境がまだ本格回復 していない影響の⽅が⼤きい。中国は回復しつつあるが、⽶州、欧州などは市場 がまだ回復していない。また、カメラが売れていかないと交換レンズも伸びていかない⾯もある。そのような状況を踏まえた計画である。※2020年12月期 第2四半期 決算 質疑応答資料より

決算発表プレゼンでCOVID-19の影響でカメラ市場が半分に縮小しながらも、ミラーレスレンズは好調に推移し売上高の落ち込みを最小限に抑える事が出来たにも関わらず通期見通しで減収としている事に対した質問になります。気になる文言が太字の箇所で…

  • カメラが売れていかないと交換レンズも伸びていかない⾯もある

要は交換レンズ・ビジネスにおいて分母となるカメラ本体の数が多くないと、交換レンズの販売数に影響してしまうという事になります。話は変わりますが、RFマウント/Zマウントなどの新しいマウントは、それなりにシェアを気付かないと、サードパーティ製レンズメーカーは、対応レンズを投入し難いという見方ができるかもしれません。昨夜のシグマ 山木社長の「他のマウントについては…ちょっと答え辛い。色々検討しているが、現状では " Lマウント " と " Eマウント " で発売します。ここに注力していくのが当社の方針です。」のコメントの後にこの発言を見ると個人的にそう感じてしまうのです。

2020年上期総括 タムロン全体

2020年神総括

COVID-19の影響でカメラ市場は数量でも金額でも約半減しており、タムロンの2020年上期の実績は、前年比で売上高は28%減収、営業利益は63%減益とのこと。

  • 売上高 … 208億9,600万円
  • 営業利益 … 8億2,800万円

タムロン全体として2020上期はしっかり黒字を確保している事が確認できます。しかしデジカメ関連は大きな減収と掲載しているで影響は大きい模様。

2020年上期総括 写真関連

写真関連
  • 売上高 … 135億4,900万円
  • 営業利益 … 16億8,600万円

自社ブランド・OEM 交換レンズ関連は、市場半減の影響を受け大きく減収ながらも黒字を確保。ノート付きの資料を見ると、ミラーレス用レンズの売上が、売上高の落ち込みの減少幅よりも抑える事が出来たと掲載しているので、厳しい状況でもミラーレス用レンズの動きは自体は好調である事が伺えます。逆に一眼レフ用レンズが大きく落ち込んだ事も掲載。

2020年 通期見通し 写真関連

通期見通し

こちらは写真関連の通期見通し。下期のカメラ市場は上期と比べて回復感は出てくるが、縮小傾向は続くと予想。写真関連ではないですが、逆に監視カメラや⾞載カメラ等の産業向け市場は、徐々に成⻑基調に戻っていくものとタムロンは考えています。※ノート付き決算資料より

  • 売上高 … 342億万円
  • 営業利益 … 47億円

あくまでも見通しですが、前年比で売上が3割減、営業利益は半減しています。しかし2020年上期実績と比べると盛り返してくる見通しに。

2020年の新レンズ投入は「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」で終了

新レンズ

以前から決算発表で今年は4本のミラーレス用レンズの投入を予定している事を告知していましたが、予定通り先日開発発表した「70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXD (Model A047)」を秋に投入して終了の模様。スクリーンショットは貼りませんでしたが、通期見通しのプレゼン画像の1枚に " ミラーレスにシフトは継続 " と掲載しているので、来年も4本ぐらいのミラーレス用 新レンズが登場してくるのでないでしょうか。

そろそろミラーレス版 タムキューの登場にも期待したいところです。

事業ポートフォリオ

事業ポートフォリオ

タムロンは、決算発表前に「総合報告書2020」をリリースしています。その中の事業ポートフォリオが興味深く、横軸が " 売上規模 " で縦軸が " 市場成長率 " となっていて、写真関連は売り上げが大きいものの成熟市場扱いであまり成長が見込めない事を示唆しています。

逆に「車載」「監視/FA」は、市場拡大と売上がバランス良く見込める市場である事が伺えます。医療関連に関しては、市場成長率は高いものの光学メーカーにとって売上的にはそれほど多くない模様。

車載レンズ

車載カメラはイメージセンサーに注目が集まる事が多いですが、カメラはレンズと組み合わせて使うものですからカメラの数だけレンズの需要もあります。車載カメラは上記のように複数搭載されるので光学メーカーにとって重要な成長市場になりそうです。