富士フイルム 飯田氏「X-T4」「X100V」「GFXシステム」「Xレンズ」の方向性を語る
dpreviewが、富士フイルム 飯田年久氏 インタビュー記事を掲載しました。新型「X-T4」「X100V」の話から、今後のGFXシステムの方向性や、動画機能の重要性、XFレンズのリニューアルやトキナーなどのサードパーティ製メーカーの存在など抱負を語っています。
緊急事態宣言が行われる前に行ったインタビュー記事で、新型肺炎の影響と状況は日々一刻と変わりつつあるので、新型肺炎のインタビュー箇所は割愛しました。
「X-T3」の派生機ではなく「X-T4」と新しい製品名にしたのはなぜ?
- それには議論を重ねていてチーム内で「X-T3S」にすべきという意見もあった
- イメージセンサーと描画エンジン以外「X-T4」に施した変更箇所を考えると、まったく異なる機種に仕上がっている
- 新シャッター、新IBISユニット、新バッテリーなど
- 上記の理由で「X-T3」とまったく異なる機種であり「X-T4」と名付けた
「X-T4」と「X-H1」のIBISユニットの違いは?
- まったく新しく設計を施したIBISユニットである
- 新しいパーツを採用し、ユニットのパーツ数を減らし、手ブレ補正効果はより強力になっている
- コンポーネントと構造を刷新しており、サイズと質量は「X-H1」のIBISユニットと比べて、約30%小さくなり、20g軽い
- 研究開発(R&D)チームにとって「X-H1」と「GFX100」の経験が役立っている
- 「X-H1」の経験がなければ「X-T4」の新IBISユニットを仕上げる事はできなかったし、「GFX100」も同じ事が言える
- これまでの経験と知見が無ければ、開発する事ができなかった
先進的な4K機能とIBISを搭載した「X-T4」が登場した訳ですが、「X-H」ラインの開発はどうなって行くのでしょうか?
- 詳細は言えないが、コンセプトは「X-Tシリーズ」より大きく異なるものになるだろう
飯田氏が、今後も「X-Hライン」を今後も開発し続ける事を語った事にも触れています。dpreviewは、これはさらに強力な動画機能が搭載される事を示唆していると掲載。ここ最近富士フイルムは「X-Hシリーズ」を継続する事を示唆するメッセージを送り始めています。(その1、その2)
「X-T4」のAFと同等レベルに引き上げる「X-T3」ファームウェアアップデートを予定していますか?
- 同じイメージセンサーと描画エンジン(プロセッサ)を搭載しているので、技術的に可能である
- ファームウェア開発には優先順位があり、多くのプロジェクトが存在するが、将来的にX-T3を所有する顧客の為に実現したいと考えている
「X-T4」は「X-T3」と同じ " X-Trans CMOS 4センサー " と " X-Processor 4 " を搭載していますが、進化したアルゴリズムを採用する事によりAF焦点速度0.02秒を実現し、顔・瞳AFをはじめトラッキングAF性能を向上したと言われています。時期は分かりませんが、どうやら「X-T3」にAF性能強化ファームウェアアップデートが用意されそうな感じです。
ラインアップ上「X-T3」と「X-T4」は併売するのでしょうか?
- はい
- 「X-T3」は市場投入して1年以上経つが、良好なセンサーと描画エンジンを搭載している
「X-T4」と併売する事「により「X-T3」の市場価格は少し下がる事が予想され、IBISが必須でなかったり、カメラ資金を抑えたい方は「X-T3」は選択肢の1つになり得るのではないでしょうか。あと「X-T4」は、動画専用メニューを用意し動画撮影時の操作性を向上させた事をアピールしているので、動画志向の方は「X-T4」の方が魅力的に感じるかも。
「X100V」が発売されたばかりですが、反響と手応えは?
- 反応は非常に良好
- 2月に発売した機種だけに(新型肺炎の影響で)出荷台数は限定的だった
- なのでシルバーを先にリリースし、ブラックを後でリリースする事になった
- バックオーダーを抱えている状態で、フィードバックのすべてが非常に好意的なものである
「X100V」の現世代のイメージセンサーと描画エンジンを搭載しつつ、ついにチルト式タッチパネルを採用し、新開発レンズも搭載、ボディ自体の仕上がりも美しく注目しているユーザーさんは多いのではないでしょうか。ただしボディサイズを維持しながら4K動画機能の性能を落すことなく搭載したため " 熱問題 " を指摘する声がある事も確か。
「X100V」にこのような先進的な4K機能を搭載する重要性は?
- 誰もが「X100シリーズ」が主に静止画用途のカメラである事を分かっている
- 「X100シリーズ」で動画撮影しているユーザーが多くない事も承知している
- 我々は「X100V」で静止画ユーザーにも4K動画を楽しんでもらいたかったのです
動画機能は「X-T4」と比べて「X100V」は重要ではないが、富士フイルムは4K動画品質に自信を持っている事も語り、将来的な可能性も示唆しています。
「GFX100」は発売してからもうすぐ1年経ちますが、どのような状況でしょうか?
- 販売台数は、当初の予想よりも50%上回ってると言える
- とても好調で、バックオーダーを抱えていたが、ようやく(供給が需要に)追いつく事ができた
- 販売台数は上々で、特に " IBIS " と " AF " 周りのフィードバックは肯定的である
2019月6月に発売された1億画素センサー搭載 中判ミラーレス機「GFX100」は、想定を上回る数が売れている事が伺えます。個人的にそろそろ「GFX 50S」「GFX 50R」後継機に期待したいところ。
どのようなタイプの写真家が「GFX100」を購入しているのでしょうか?
- 予想通りファッション・コマーシャル・風景写真家であるが、今では航空写真や記録写真などの用途で産業写真家の注目を集めている
- これは興味深い展開である
「GFX100」は、とても有能な動画機でもあるが、顧客が映像作品用途で使用している割合は?
- 一部のフィルムメーカーがこのシステムを評価している事は知っている
- 「GFX100」を動画用途で使用している顧客人数は把握していない
- しかし我々はユーザーが動画用途でも使用してくれればと思っている
GFマウントのシネレンズの可能性は?
- シネレンズ Premista(プレミスタ)シリーズは、 ラージフォーマットセンサーに対応しており、これらでのレンズ群はマウントアダプター経由でGFマウント可能だろう ※意訳しています
富士フイルムは、シネレンズ「Premista シリーズ」「HK Premier シリーズ」「ZK Cabrio シリーズ 」「MK シリーズ」をラインアップしており、今のところGFマウントの具体的なシネレンズは無い事が伺えます。おそらく「MKシリーズ」のようなGFマウント版の可能性を聞いたのではないでしょうか。※MKシリーズは、APS-C Eマウント/Xマウント対応
GFラインは3年経ったが、将来的にGFXカメラはどのような進化をしていくのでしょうか?
- レンズファインダースタイルの「50R」、一眼レフスタイルの「50S」、統合した「GFX100」をラインアップしているが、ラインアップにおける(コンセプトの)違いは維持していきたい
固定レンズを採用したX100スタイルのGFXカメラの可能性は?
- 現時点でそのようなカメラの計画はない
- 我々はレンズ交換式(カメラ)に注力したいと思っている
- 固定レンズ設計を行うとなると、そのようなカメラにレンズ開発チームを割り当てる必要が出てくる
- 今のところGFレンズラインアップの拡充が我々の優先事項
「X100」のようなレンズ固定式のGFXカメラの計画は現時点で無い模様。レンズ固定式の中判カメラは、どこまで需要があるのかどうか、あとやはりコンセプト的にプレミアムカメラになりそうですよね。
GFレンズラインアップ拡充に際して優先事項は?
- 最優先事項は、80mmF1.7をレンズラインアップに投入する事である
- このようなレンズ群に注力していく
- しかし今後も顧客の要望に耳を傾けていく
富士フイルムはGFレンズロードマップ上で「GF80mmF1.7 R WR」を計画しており今回のインタビュー記事を見る限り、F1.7レンズのシリーズ化を計画しているのかもしれません。あと「GF30mmF3.5 R WR」も予定しています。
「GFX 50S」「GFX 50R」ユーザーは次世代機でどのような変更・改善を要望しているのでしょうか?
- みんな画像品質・解像度・ダイナミックレンジを気に入っており、これまでの中判カメラと比べて使い易く持ち運びが簡単である
- 多くのフィードバックを得ている
- 彼らが本当に改善して欲しい事はAFスピード
今後の開発において要望に応えていく?
- 我々が取り組んでいきたい事の一番最初にリストアップしている
- 引き続きAFスピードの改善に注力していく
あと次世代機は、AFスピードが向上しそうな気配です。まだ「GFX 50S」「GFX 50R」後継機の具体的な噂はないので、2021年以降になるのか2020年後半に何かしら動きがあるのか気になるところ。Xカメラに比べるとGFXカメラのライフサイクルはゆっくりしています。
グロ―バル市場において地域的に売れている機種は違うのでしょうか?
- ミドルクラスとハイエンドカメラは均一に売れており、日本・米国・欧州はほとど同じ売れ行きである
- 中判市場も差はないが、中国においてGFXの需要は非常に高い
- 「X-A7」や「X-T200」などのエントリー機は例外的で、主要な市場はアジア圏になる
以前からXシリーズ エントリー機はアジア圏で人気が高い事が知られていますが、ミドルクラス・ハイエンド機は世界中で分け隔てなくに売れている模様。…という事はアジア圏以外では、エントリー機はあまり売れていないという事に。実は前回の決算発表でエントリーモデルの売上が減少している事を明らかにしているので、「X-T200」と「XC35mmF2」の発売はテコ入れ策かもしれません。
(新型肺炎における)中国の状況はGF製品群に影響を及ぼしているのでしょうか?
- はい、2月にすべての店舗が休業したため
- しかし、その後店舗の80%が営業を再開している
- オンラインのセールスは安定している
サードパーティ製 動画アクセサリー類エコシステムの成長促進に何か行っていますか?
- 顧客は、ジンバルやドローンのようなサードパーティ製アクセサリー類との互換性を必要としているので、ほぼすべての仕様をサードパーティ製メーカーに公開している
DJIやRODEのようなメーカーと積極的に話をしているという事?
- はい、積極的に行っています
サードパーティ製メーカーにXマウントを開示する予定は?
- はい、ケンコー・トキナーはすでにAF対応 Xマウントレンズ3本の(開発)発表を行っている
- 多くの顧客が、より多くのレンズを望んでおり、そのニーズを満たしていきたい
トキナーはXマウント交換レンズ「23mm F1.4 X」「33mm F1.4 X」「56mm F1.4 X」の発売を2020年秋に予定しています。ツァイスのAF対応 Touitレンズに続くライセンス化したレンズと言って良いのではないしょうか。…という事は、将来的にシグマやタムロンも…どうなんでしょう。
去年 第一世代XFレンズのリニューアルに関してユーザーからフィードバックを集める話をしていたが、近況をお聞かせください
- 我々は、古いレンズをリニューアルする必要性を十分認識している
- ロードマップ上に " Mark II レンズ " 製品は含まれていないが、(ラインアップ上で) " キー " となるレンズ群の新バージョンは開発中である
- 場合によっては " 新しい光学設計 " や " メカニカルな箇所の再設計 " が必要となってくるかもしれない
製品名に " Mark II " が付けられるかどうか分かりませんが、古くなってきている主要レンズに関しては何かしらリニューアルを計画している事が伺えます。部分的なマイナーチェンジからほぼすべてを刷新したようなレンズ群が登場してきそう。
Xレンズラインアップは、どの辺が強化されていくのでしょうか?「XC35mmF2」のようなレンズがさらに増えるのでしょうか?
- まず最初に顧客が「XC35mmF2」にどのような反応を示すのか確かめる必要がある
- 反響があれば、このタイプのレンズをさらに検討する事になるかもしれない
- 現時点でそれに答えるには時期尚早である
「XC35mmF2」の光学性能とAF性能は「XF35mmF2 R WR」は同じと言われており、将来的に撒き餌レンズ的なXCレンズシリーズがラインアップする可能性も。
編集後記
今のところ富士フイルムの研究開発は新型肺炎の影響を受けながらも順調で、様々な製品群の方向性に期待する感想を掲載。トキナーがAF対応 Xレンズの投入を計画している事を例に挙げ、シグマやタムロンからXレンズが登場する可能性も示唆しています。※基本的にサードパーティ製メーカーがAFに対応するにはマウント側の協力が必要と言われています。