かつてアクションカメラ市場の絶対王者として君臨したGoProが、身売りを含めた「戦略的見直しの計画」と財務アドバイザーの起用を公式に表明しました。「MISSION」シリーズの発表で株価は1ドルを上回りましたが、6月5日以降の株価が再び「1ドル」の大台を割り込んだ状態が続いています。
起死回生を狙った新型「MISSION」シリーズはクリエイターから高い評価を得ているものの、企業の存続をかけた単独の「完全復活」は難しいと言わざるを得ません。アクションカメラ・ハンドヘルド世界市場シェアの圧倒的な格差、中国勢の潤沢な資金力、そして深センを中心としたサプライチェーンの構造的優位性を前に、1企業が抗うにはタイムリミットが迫っています。本記事では、なぜGoProがMISSIONのヒットを以てしても単独復活が難しいのか、その構造的理由を紐解きます。
「MISSION」シリーズを発表するも株価は再び1ドル割れ

GoProは次世代アクションカメラ「MISSION」シリーズを2026年4月に発表し、大きな注目を集めました。これにより株価は一時1ドル台に回復したものの、5月の決算発表で「会社売却を含む戦略的代替案の検討」に入ったことを公表。創業者兼CEOのニコラス・ウッドマン氏も売却プロセスを支持する意向を示しました。そして6月には「存続のリスク」を公式に警告。デフォルト(債務不履行)を回避すべく、資金調達や企業売却(M&A)の交渉を急ピッチで進めています。
とうとう6月5日には株価が再び1ドルを割り込み、6月12日(金)の終値は0.78ドルと低迷したままです。この状態のままで身売りをすれば、買い手に足元を見られかねません。だからこそ「MISSION」シリーズのヒットは必須ですが、その業績回復は単独復活の光というよりも「身売り交渉におけるGoProの手札(カード)を強くするため」の意味合いが濃くなっています。
アクションカメラ・ハンドヘルドカメラ世界市場シェア 2025

- DJI:62.4%
- Insta360:20.4%
- GoPro:10.8%
通信/IT関連を専門とする世界的な市場調査会社「IDC」のデータによると、2025年のアクションカメラ・ハンドヘルドカメラ市場シェアは、DJIが62.4%と圧倒的な首位を築いています。2位のInsta360と合わせると、中国勢だけで実に82.8%ものシェアを占めているのが現状です。
ここからGoProが「MISSION」シリーズをヒットさせたとしても、シェアを大きく奪還するのは極めて困難と言わざるを得ません。今回の「MISSION」シリーズによってスペック的には競合製品に近付きましたが、DJIもInsta360も決して開発の手を緩めてはいないからです。
※ Michael’s SubstackのDJIとInsta360の特許戦争に関する記事の中に、IDCによるアクションカメラ・ハンドヘルドカメラ市場シェア2025のデータが掲載されています。
ちなみにBCNによるGoProの日本国内シェア(2025年)は、18.9%となっています。
サプライチェーンの速度
DJIやInsta360などの中国勢は、圧倒的な資金力と深センのサプライチェーンを活かし、年間複数モデルを驚異的なスピードで投入して市場を支配しています。シェアがここまで落ち込んだGoProが、たった一つのシリーズのヒットだけでこの盤面をひっくり返すのは至難の業です。
資金不足でチャンスを活かすことが難しいGoPro
実は、独走を続けるDJIとInsta360も決して無傷ではありません。両社は現在、泥沼の特許権帰属訴訟の真っ只中にあります。加えてDJIは、米国の「DJI排除法案(Countering DJI Drones Act)」の影響により、米国国内でのドローン販売が事実上不可能な状態です。Pocketシリーズなどの通常製品は今も米国で販売されていますが、先行きへの不透明感は否めません。
GoProにとっては、この隙に米国市場のシェアを奪取するため、大量のマーケティングを仕掛けたり積極的に増産したりしたい絶好のタイミングです。しかし、現在のGoProにはそれを実行する資金的な体力が残されていません。さらに、メモリ価格の高騰も大きな重荷となっています。長期のメモリー固定価格契約を結べていないスポット買いの調達コストは、すでに何倍にも高騰していると言われています。
結論

GoProの世界シェアが1割強にとどまり、DJIやInsta360に大きな差をつけられていること、そして何より企業売却(M&A)の交渉を進めている現実を鑑みると、GoProが単独で完全復活を遂げるシナリオは極めて厳しいと言えます。現実的なハッピーエンドは、単独での無理な生存を追うのをやめ、「最高の条件で大手に身売り(M&A)を果たすこと」ではないでしょうか。
「MISSION」シリーズが市場でヒットすることは、買収を検討する大企業に対して「GoProの映像技術とブランド価値は今なお健在である」と証明する強力なアピールになります。
もちろん、GoProが単独で完全復活を遂げるのが理想であり、それを願うファンも多いはずです。私もその一人です。しかし、GoProに残された時間が極めて少ないことも紛れもない事実です。

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