住友化学が、世界トップクラスのCMOSイメージセンサー向け超低屈折率の透明薄膜材料を開発

住友化学が、超低屈折率透明薄膜材料を開発したことを発表しました。実用レベルで世界トップクラスとなる屈折率1.06を達成する新規塗工液を開発したとのこと。2026年中のサンプル提供開始を予定していることも明らかにしています。

住友化学の超低屈折率透明薄膜材料

ミクロな「透明薄膜」の役割とは?

交換レンズの表面にコーティングがあるように、センサー内部でも、役割の異なる透明薄膜が何層も重なり合って光をコントロールしています。その主な役割は以下の4つです。

  • マイクロレンズ(光を集める)
    画素の最表面にある極小レンズ。光をギュッと急角度で曲げるために、近年は「高屈折率」の有機樹脂が主流です。
  • 平坦化層(土台を平らにする)
    回路のデコボコを埋めるクッション。この層のおかげで、その上に歪みのない綺麗なマイクロレンズを並べられます。
  • 反射防止膜(光を100%通す)
    材料の境界での光の跳ね返りを防ぐ層。屈折率の異なる無機材料をナノ単位で交互に重ね、光のロスを無くします。
  • 光閉じ込め層(隣へ光を漏らさない)
    光を画素の底へ導くトンネル。斜めからの光が隣の画素に漏れて写真がボケたり色が濁る(混色ノイズ)のを防ぐため、壁に「低屈折率材料」を配置して光を閉じ込めます。

センサーの中では「光を集める材料」と「光を逃がさない材料」を巧みに組み合わせることで、高画質化を実現してきました。具体的には、光を集めるマイクロレンズ、土台を平らにする平坦化層、透過率を最大化する反射防止膜、隣へ光を漏らさない光閉じ込め層の4つの役割を、それぞれの透明薄膜材料が担っています。これらの薄膜材料は役割ごとに求められる屈折率が異なるため、一般的な透明薄膜材料の屈折率はおよそ 1.3 〜 2.0 と幅を持った分布になっています。

住友化学の超低屈折率の透明薄膜材料

項目内容
材料屈折率 1.06 の超低屈折率透明薄膜材料
屈折率制御範囲1.06〜1.36(組成・成膜条件の調整による)
プロセス常圧の塗工プロセスで製膜できる塗工液タイプ
特性可視光全域で透過率 99.9%、耐熱 300℃、高い耐溶剤性
技術ナノメートルサイズの細孔を均一分散させる独自技術
想定用途CMOSイメージセンサーの集光部、メタレンズ、光電融合デバイスの光接続部
スケジュール2026年中にサンプル提供開始予定

薄膜(塗工・成膜で作る固体薄膜)として屈折率1.1を切る材料は、住友化学の今回の新材料が初めてとされています。

空気の屈折率は「1.00」、水は「1.33」、ガラスやプラスチックなどの固体はだいたい「1.4〜1.6」です。固体はすき間なく詰まっているので、この値より小さくなることは普通ありません。

ところが今回の住友化学の新材料は「1.06」となっており、つまりほぼ空気と同じです。そんな値にするには、膜の中の大部分を空気(すき間)にしてしまい、固体の部分は骨組みだけにするしかありません。イメージとしては、スポンジや金網のような、ほとんどが空気でできた膜です。固体がギッシリ詰まっていたら、1.2 にもなりません。

住友化学の新材料は「ナノメートルサイズの細孔を均一分散させる独自技術」でこれを解決した点が核心であり、「1.06〜1.36」の連続制御、可視光全域で透過率 99.9%、耐熱 300℃、高い耐溶剤性という物性は、細孔を均一に制御できたことの裏付けになります。

さらに、半導体工場で使い慣れた「液体を落として回して薄く伸ばす(スピンコート)」という既存の設備をそのまま使える塗工液タイプであるため、製造コストを抑えられるという極めて実用的な強みも備えています。


具体的に期待される効果

  • 感度・量子効率の向上
    反射損失とクロストークの両方が減るため、同じ画素サイズでより多くの光を取り込める → 暗所性能・ダイナミックレンジの改善
  • 微細化の限界を押し広げる
    小画素でも集光できるため、高画素化と高感度の両立がしやすくなる
  • 画素ごとの色再現の改善
    隣画素への漏れが減り、色のにじみ・混色が減る
  • 入射角依存の低減
    レンズの周辺部(斜め入射)でも集光効率が落ちにくい → 周辺減光の改善

CMOSイメージセンサーへの採用で効いてくるのは、主に「集光効率(感度)」と「画素ごとの色分離・斜め入射対応」、そして「レンズ設計の自由度」の3点です。

※微細化 : 配線やトランジスタの加工寸法を細くする技術

ただし「採用=すぐ高性能」ではない

住友化学は2026年中にサンプル提供を開始するという段階。新材料をただセンサーに採用しただけで効果が出るわけではなく、そのポテンシャルを100%引き出すための「最適化設計」が各センサーメーカーに求められます。

最適設計を施し大量生産を決定するには、過酷な環境での信頼性試験や、製造時の歩留まり(良品率)の検証をクリアしなければなりません。

現時点でこの新材料が、まずはコストにシビアなスマホやデジカメといった「民生カメラ用センサー」から採用されるのか、あるいは「産業・エッジAI分野のセンサー」から先行して投入されるのかは分かっていません。

しかし、将来的にこの住友化学の超低屈折率材料を味方につけた、従来以上の暗所性能や周辺画質向上した民生カメラ用CMOSセンサーが登場したら、大きな注目を集めるかもしれません。


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