ニコン 2026-2030年度 中期経営計画:映像事業は「デジタルシネマカメラ」でさらなる高みへ

ニコンが2026年5月8日に発表した「2026-2030年度 中期経営計画」において、映像事業は「安定利益創出事業」の筆頭に挙げられつつ、その中身は「静止画から動画へ」の劇的なシフトを鮮明に打ち出すものとなりました。

特に注目すべきは、米RED社の買収を柱としたデジタルシネマカメラ市場への本格攻勢です。

ニコン 2026-2030年度 中期経営計画

映像事業の新たな位置づけ:「稼ぎ頭」から「成長の牽引役」へ

事業ポートフォリオ
映像事業運営

前中計(2022-2025年度)において、映像事業は「Z9」や「Z8」のヒットにより、ニコンの全事業の中で最も安定した収益基盤となりました。今回の中計では、この強固な基盤を背景に、さらなる利益率の向上と市場シェアの拡大を目指します。

  • 2030年度目標売上高 : 3,800億円(2024年度見込み:2,800億円から大幅増)
  • 事業ROIC目標 : 15〜20%(極めて高い資本効率を目指す)

ちなみにROIC経営は、企業が投下資本に対してどれだけの利益を生み出しているかを測る指標です。一般的には8〜10%が優良とされる中で、15〜20%という数値は極めて高い。

戦略の核:RED社とのシナジーによる「シネマ市場」覇権

タイトルにもある通り、映像事業の最大の見どころはシネマカメラへの注力です。資料では、RED社の持つ「独自の画像圧縮技術(REDCODE RAW)」や「カラーサイエンス」と、ニコンの「光学技術」「信頼性」「AF性能」を融合させることが明記されています。

「Z CINEMA」シリーズでは、ニコンとREDの強みを組み合わせたデジタルシネマカメラ開発、シネマレンズ追加でシステム価値向上

  • 動画専用機の拡充
    プロフェッショナル向けのシネマカメラだけでなく、Zシリーズで培った技術を活かした「動画志向のミラーレス機」のラインナップがさらに強化される見込みです。
  • プロ市場でのプレゼンス拡大
    映像制作現場(BtoB)でのシェアを拡大し、単なる「カメラメーカー」から「映像制作ソリューションカンパニー」への変革を図ります。

「静止画」も疎かにはしない:ファン層の維持と拡大

動画への注力が強調される一方で、中計では「Zマウントエコシステムの拡大」も重要施策として残されています。

Zマウントレンズは30年度までに80種類以上へ

  • レンズラインナップの拡充
    ボディだけでなく、収益性の高い交換レンズのラインナップをさらに広げ、既存の静止画ユーザーの満足度も維持します。
  • 引き続き中高級機への集中
    前中計から進めてきた「中高級機へのシフト」を継続し、レンズラインナップの拡充による「Zマウントエコシステムの拡大」を通じて、高収益な事業構造を維持します。趣味層やプロ層をターゲットにしていることが伺えます。

2030年に向けた映像事業のビジョン

ニコン ミッション

ニコンは、映像事業のビジョンとして「映像の力で、人の感性を刺激し、クリエイティビティを最大化する」ことを掲げています。これまでは「記録するための道具」だったカメラが、REDとの融合によって「表現を創造するためのデバイス」へと進化していく過程が、今回の中計から読み取れます。

ちなみに2026-2030年度 中期経営計画のミッションは、「Unlock the future with the power of light / 光の可能性に挑み、未来を変える」と定義しています。

まとめ

映像事業における成長分野の主役は「動画」へとシフトしています。RED社を完全子会社化したことで、両社の関係をさらに深化(技術の融合)させ、これまでの「静止画メイン」から、シネマカメラを含めた「映像制作全般」をカバーするブランドへ進化するという、ニコンの強い意思表示と言えます。

既存のファンを大切にしながら、市場環境の変化に合わせて高付加価値製品(中高級機やZマウントレンズ)に注力し、15〜20%という高い事業ROIC(資本効率)を維持し続ける。映像事業をどこまで「収益を上げられる体質」に引き上げ、成長させていくのか、今後の展開から目が離せません。

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