CP+2026の開催に合わせ、フランスのメディア「Phototrend」がキヤノンの開発・戦略部門のエグゼクティブへ行ったロングインタビューの内容が公開されました。

現在、カメラファンがキヤノンに抱いている最大の疑問――「サードパーティ製フルサイズレンズはいつ開放されるのか?」「なぜEOS R6 Mark IIIはあえて最新の裏面照射センサーを見送ったのか?」そして「ニコンや富士フイルムのようなレトロスタイル機は出ないのか?」――。
これらの鋭い問いに対し、戸倉剛氏をはじめとする幹部陣は、契約上の守秘義務に触れつつも、極めて明確な「キヤノンの哲学」をもって回答しています。本記事では、膨大なトピックから私たちの今後のカメラ・レンズ選びに直結する重要な発言を独自の視点でピックアップし、分かりやすく整理してお伝えします。
※私がフランス語に精通していないため、機械翻訳の力を借りつつ、より正確で分かりやすい表現になるよう、丁寧に校正・再構成したものです。
- EOS R6 Mark III:技術選定の意図
- RF14mm F1.4 L VCM:超広角・大口径と小型化の両立
- RF7-14mm Fisheye の狙いと新機軸
- RF45mm F1.2 STM:超大口径を「軽く・安く」実現した逆転の発想
- RFマウントの未来:止まらないレンズ拡充と多様化への自信
- サードパーティ・レンズメーカーとの連携、および今後の展望
- 沈黙のキヤノン : フルサイズレンズのサードパーティ開放について
- サードパーティ完全開放の可能性:ユーザーの声が戦略の鍵
- キヤノンの自給自足:サードパーティレンズメーカーの立ち位置
- キヤノンが描くAI技術のロードマップ
- 撮影後の「選別」もAIが担う:カメラ内で完結させる未来
- PowerShot 30周年記念モデルの意図
- 「AE-1」50周年:伝統よりも「進化」を選ぶキヤノンの決意
- キヤノンの未来予測:3D化と「五感」の再現、そしてAIの役割
- 【考察】デジカメライフ的視点
EOS R6 Mark III:技術選定の意図
キヤノンは、EOS R6 Mark IIIに「表面照射型(FSI)センサー」と「DIGIC Accelerator」を搭載しなかった理由について、以下の通り述べています。
「究極のバランス」の追求
単なるコストカットや上位機との差別化ではなく、パフォーマンスと価格の「最高のバランス」を求めた結果の技術選定である。
実用性の維持
上位機種(EOS R1/R5 II)との差はあるものの、信頼性の高い「デュアルピクセルCMOS AF」を搭載しており、撮影の快適さは十分に確保されている。
R6シリーズとしての最適解
高画質と高速性能、そしてコストの三原則において、R6シリーズの立ち位置に最も適した構成であると確信している。
RF14mm F1.4 L VCM:超広角・大口径と小型化の両立
キヤノンは、「14mm F1.4」という極めて困難なスペックをLレンズの品質で実現できた理由として、主に以下の3点を挙げています。
RFマウントによる設計の自由度
大口径かつショートバックフォーカスというマウント特性を最大限に活かし、レンズ周辺部に至るまで高い光学性能を確保しつつ、コンパクトな設計を可能にした。
キヤノン独自の光学技術の集結
色にじみを極限まで抑える「BRレンズ」をはじめ、蛍石や3枚の非球面レンズ、特殊コーティング(SWC/ASC)など、現時点での最高技術を惜しみなく投入している。
※ BRレンズ : 光学素子となるBR(Blue Spectrum Refractive)光学素子を新たに開発し、青色の光の進路を制御することで、大口径レンズに出やすい色収差を高度に補正する複合レンズ。絞り開放からキレのある先鋭な描写が特徴。
高度な製造・量産技術
高度な設計理論を現実の製品として形にする、精密な製造プロセスと量産体制が整っていたことが、このレンズの誕生を後押しした。
※ キヤノン 宇都宮工場 : 交換レンズの加工から組立まで一貫生産。高度光学技術の粋を結集させた、研究・開発から生産までを一貫して行う重要な拠点。
RF7-14mm Fisheye の狙いと新機軸
キヤノンは、数年ぶりの復活となった魚眼レンズの狙いについて、以下のように明かしています。
あえて用途を限定しない「表現の道具」
スポーツや建築といった特定のジャンルに絞るのではなく、新しい表現を求めるクリエイターの「創造性」に委ねるというスタンスで開発された。
世界初「190°」の超広視野角
一般的な魚眼レンズ(180°)を超える190°という世界初の画角を実現。これにより、これまでにない視覚体験を提供する。
VR・360度コンテンツへの高い適性
その広い画角から、特にVR撮影との相性が抜群である。2本組み合わせることで360度の全天球パノラマ撮影も視野に入れた、次世代の映像制作を見据えた設計となっている。
RF45mm F1.2 STM:超大口径を「軽く・安く」実現した逆転の発想
徹底した「引き算」の光学設計
レンズ枚数をあえて最小限に絞り込むことで、鏡筒の直径をスリム化。大口径レンズ特有の「重くて大きい」という常識を覆した。
素材とメカニズムによるコストダウン
高精度なプラスチックモールド(PMo)非球面レンズを効果的に活用し、駆動系に小型なギアタイプSTMを採用することで、軽量化と手頃な価格を両立させた。
※ プラスチックモールド(PMo)非球面レンズ : 元々より量産性が高く低価格なレンズ。その精度を上げたレンズを採用。
「手の届く大口径」路線の継続
今後も、こうしたアクセシビリティ(入手しやすさ)を重視した個性的なレンズバリエーションを増やしていく意欲を示している。
RFマウントの未来:止まらないレンズ拡充と多様化への自信
年間6〜8本のハイペースを維持
すでに60本を超えたRFレンズ群だが、今後も歩みを止めることなく、一貫したスピード感でラインナップを拡大し続ける。
※ RFレンズは中期的に100本達成を目指す : キヤノンは、2025年11月に開催した「イメージンググループ事業説明会」において、今後も同様のペースで拡充を続け、中期的には100本達成を目指すことを明言しています。
EF時代を超える「多種多様なレンズ」の実現
RFマウントの設計自由度を活かし、一眼レフ(EF)時代には存在しなかったような、あるいはEF時代よりも優れたバリエーションのレンズを投入していく。
リニューアルへの意欲
初期RFレンズの更新(リニューアル)の可能性も示唆しつつ、単なる置き換えに留まらない「RFならではの進化」を追求する姿勢を見せている。
サードパーティ・レンズメーカーとの連携、および今後の展望
キヤノンの戸倉氏は、シグマやタムロンに続くサードパーティの参入について、以下のように述べています。
「戦略的」なライセンス開放の継続
サードパーティの参入は重要なビジネス戦略と位置づけており、今後も門戸を広げていく可能性を検討している。
新たなメーカー参入への含み
「協力関係が深まる可能性がある」としつつも、キヤノン側の戦略に基づいた一定の制限(特定のスペックやブランドの選別など)があることを示唆した。
開発の独立性の維持
ライセンスは供与するものの、具体的な製品開発には一切関知しない「独立した関係」であることを強調。どんなレンズが出るかはメーカー次第というスタンス。
沈黙のキヤノン : フルサイズレンズのサードパーティ開放について
キヤノンの戸倉氏は、フルサイズ用レンズのサードパーティ開放について、以下のように述べています。
「フルサイズとAPS-Cを区別していない」という建前
メーカーとしては、センサーサイズによって開放の基準を分けているとは明言せず、あくまで戦略の一環であるという姿勢を崩していない。
「現状」は認めるものの、将来についてはノーコメント
サードパーティがAPS-Cに限定されている現状は認めつつも、それが意図的な独占なのか、あるいは将来的にフルサイズも開放されるのかについては、明言を避けた。
外部の憶測を一蹴しつつ、可能性を残す
「外部からの見方」という言葉を使い、キヤノン内部のロジックがユーザーの予想とは異なる可能性を匂わせている。
サードパーティ完全開放の可能性:ユーザーの声が戦略の鍵
キヤノンの戸倉氏は、今後のライセンス開放の判断基準について、以下のように述べています。
契約内容については「沈黙」を貫く
特定のメーカーとの契約や、開発費回収といったビジネスの内幕については、守秘義務を理由に回答を控えた。
レンズラインナップ成熟への自信
自社レンズだけで70本近くを揃えた自負を見せつつ、システムとしての完成度が高まっていることを示唆した。
「ユーザーのフィードバック」が次の一手を決める
「サードパーティ製レンズをもっと増やしてほしい」という市場の声を認識しており、それが今後のRFマウント戦略(フルサイズ開放など)に影響を与える可能性を否定しなかった。
キヤノンの自給自足:サードパーティレンズメーカーの立ち位置
キヤノンの戸倉氏は、自社レンズラインナップの拡充とサードパーティの関係について、以下のように整理しています。
他社の製品戦略には干渉しない
サードパーティがどのレンズを作るか、どの市場を狙うかは彼らの自由であり、キヤノンがそれを直接的に制御することはない。
自前主義の貫徹
他社の動向に関わらず、キヤノンは自社の技術力をもって、ユーザーが必要とするレンズを自分たちの手で作り続けていく。
「45mm F1.2 STM」が示すメッセージ
サードパーティが得意とする「高コスパ・ユニークなスペック」の領域であっても、キヤノンは自社の技術(プラスチックモールドレンズやSTM等)で十分に対抗・補完できるという自信の表れ。
キヤノンが描くAI技術のロードマップ
キヤノンの吉川氏は、AI技術の進化に対する同社のスタンスを明確にしています。
「生成」を否定し「再現」に徹する
昨今の生成AIブームとは一線を画し、AIを「嘘を作る道具」ではなく、レンズやセンサーが捉えた光を「より忠実な現実」へと補正・復元する道具として位置づけている。
4つの重点技術領域
「ノイズ低減」「色補正」「光学収差の補正」「アップスケーリング」を挙げ、画質の根源的な向上にAIをフル活用する姿勢を示した。
撮影者の意図をサポート
被写体認識の強化や撮影支援を通じて、技術的なハードルをAIが肩代わりし、撮影者が表現に集中できる環境を目指している。
撮影後の「選別」もAIが担う:カメラ内で完結させる未来
「カメラ外からカメラ内へ」の技術移転
これまでPCソフトで行っていた高度な画像処理や選別作業を、順次カメラ本体の機能として取り込んでいく方針。
プロ現場での即時性向上
報道カメラマンなどが、撮影直後に「AIが選んだ最高の一枚」を即座に納品できるようなシステムの構築を目指している。
一般ユーザーへの恩恵(SNS連携)
プロだけでなく、一般ユーザーが「膨大な写真の中から良いものを選ぶ手間」を省き、すぐにシェアできる環境を整えたいと考えている。
PowerShot 30周年記念モデルの意図
キヤノンの加藤氏は、G7 X Mark IIIの限定モデル投入の背景について、以下のように述べています。
「テスト」ではなく「セレブレーション」
新製品に向けた市場調査などの戦略的な意図よりも、PowerShotブランドの30周年を記念するという「祝祭性」を優先した企画である。
ブランドの歴史を尊重
2019年発売のロングセラー機をベースに選んだのは、これまでのPowerShotの歩みを象徴する存在としての敬意が込められている。
「AE-1」50周年:伝統よりも「進化」を選ぶキヤノンの決意
キヤノンの加藤氏は、レトロデザイン機への期待に対し、以下のようにスタンスを明確にしています。
現時点で「レトロスタイルカメラ」の計画はなし
ファンの熱烈な要望(および毎年の記者の質問)は認識しているものの、50周年を記念したカメラの発売予定はない。
「温故知新」よりも「未来志向」
過去のデザインを再現することよりも、今の時代のニーズに合わせた「進化」を優先することが、メーカーとしての使命であると考えている。
業界の牽引役としてのプライド
伝統に固執せず、常に新しい技術で業界をリードし続けることが、結果として写真文化の継承に繋がるという信念が伺える。
キヤノンの未来予測:3D化と「五感」の再現、そしてAIの役割
キヤノンの戸倉氏は、写真の未来を決定づける要素として以下のビジョンを語っています。
「2Dから3Dへ」が最大のパラダイムシフト
写真は平面から立体へと進化し、より高い解像度と画質によって、現実をそのまま切り取るような体験へと向かっていく。
「究極のリアリティ」の探求
映像だけでなく、音や風、匂いといった五感すべてを記録・再現できるようなデバイスの可能性を見据えており、そのための技術統合を長期的な課題としている。
AIによる「操作」の革新
AIは画像の捏造(生成)に使うのではなく、音声操作などの直感的なインターフェースの進化に活用し、撮影者がより直感的に現実を捉えられるようにサポートする。
【考察】デジカメライフ的視点
今回の膨大なインタビュー記事を見る限り、キヤノンが描く2026年以降のシナリオが、3つのポイントから鮮明に浮かび上がってきます。
EOS R6 Mark III:あえて「最先端」を追わない合理性
R6 Mark IIIに裏面照射型(BSI)センサーやDIGIC Acceleratorを搭載しなかったのは、単なるコストカットではなく、「R6シリーズのアイデンティティ」と「ラインアップ上のヒエラルキー」を明確にするためでしょう。キヤノンは、積層型や最新エンジンによる「超高速・高機能」はR1やR5 IIといった上位機に任せ、R6系には「一般ユーザーが手の届く価格で、必要十分な信頼性(AFや画質)を提供する」という実利を選びました。スペック競争で他社と殴り合うのではなく、実用域での「黄金比」を維持する。これがキヤノンの考える、大ヒットシリーズを継続させるための「落とし込み方」なのだと感じます。
サードパーティ開放に漂う「大人の事情」
フルサイズ用レンズの開放について「APS-Cと区別していない」としつつも、現状はAPS-Cに限定されている点について、戸倉氏は非常に慎重な言い回しに終始しました。 ここには、「マウント開発にかかった莫大な投資(R&D)を、利益率の高いフルサイズレンズでまず回収したい」という経営判断と、「自社でフルラインナップを揃えられる技術力がある以上、安易にシェアを分け与える必要はない」という強者のロジックが透けて見えます。「45mm F1.2 STM」のような、本来サードパーティが得意とする「高コスパ・大口径」な領域を自ら埋めに来ている点を見ても、フルサイズの完全開放にはまだ高いハードル(あるいは戦略的な制限)が存在し続ける可能性が高いでしょう。
「レトロ」を否定し、「未来」で勝負する矜持
ニコン「Zf / Zfc」や富士フイルムがレトロスタイルで大きな成功を収める中、50周年の「AE-1」復活を期待する声を一蹴し、「未来への進化」を強調した点は非常にキヤノンらしい回答です。以前からキヤノンは、レトロスタイルカメラと距離を取っていました。これは、過去のヘリテージ(遺産)に頼らずとも、「3D」や「五感の再現」といった新しい映像体験で市場をリードできるという圧倒的な自信の表れではないでしょうか。ファンとしては寂しい半面、「懐古趣味」に逃げず、常に写真の定義をアップデートしようとする姿勢こそが、業界のトップを走り続けるキヤノンのプライドなのだと再認識させられました。


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