先日、富士フイルムがQ1決算発表(2026年4月-6月)を行いました。同社が追加公開したトランスクリプト(質疑応答含む)資料にメモリー関連の状況や、製品への価格転嫁に対してどういった取り組みを行っているのか明らかにしています。

トランスクリプトは、きれいに校正されたプレスリリースとは違い、「素のやり取り」がそのまま記録されているため、非常に読み解きづらいのが難点です。そのためイメージングに関する重要な要点だけをピックアップしました。
質問を行ったのは野村證券の岡崎氏、回答したのはイメージングソリューション事業部⻑ 五⼗嵐裕次郎氏です。
供給の現状:今年度分のメモリー(DRAM)などは確保済み
確かに⾜元で業績が悪いわけではないですし、第1クォーターの実績にも反映されていると思います。ただ、半導体のところで、やはり調達リスクが存在しまして、元々われわれは必要なDRAMとかを確保しているものの、想定以上に価格が上がってきているといったこともありまして、われわれの中では、きちんと売上をつくるために、まずは物を確保するということを優先させていただいたというのがありますので、そのリスクを織り込んだ数字となっております。
売上をつくるために、まずは物を確保
「元々われわれは必要なDRAMとかを確保」と表現しているので、メモリーをはじめ部材や原材料をすでに確保済みであることを明らかにしています。
この発言のやり取りの中で「今期分」なのか「今年度分」なのか直接的な言及はありませんが、今回の質疑応答が通期の見通し・業績予想に対するものであるため、基本的には今年度分の生産に必要な分を指していると考えられます。
「売上をつくるため」ということは、期間の明示はないものの、私たち消費者(ユーザー)にとっては「製品が市場にちゃんと供給される(深刻な品薄や受注停止を回避する)」という安心のメッセージと言えます。
価格転嫁
市場を⾒ながら既に価格、値上げのアナウンスをさせていただいているところもありまして、それは状況を⾒ながら、値上げも対応として考えているということは織り込んでおります。
想定以上のコスト高騰を価格改定で相殺
部材自体は確保できたものの、それらの調達価格(DRAM等のスポット価格など)が想定以上に高騰していることが現在のネックとなっています。このコスト上昇への対策として、市場動向を見極めながらすでに一部製品の価格改定(値上げ)を発表・実施しており、製品への価格転嫁を進めている状況です。今回の通期業績予想には、この値上げによる効果も織り込み済みとなっています。
すでに企業努力だけで販売価格を維持することが困難であることがうかがえます。国内外で値上げのタイミングは異なりますが、ドイツ(欧州)などで9月に値上げが行われる模様です。
まとめ : 富士フイルム カメラのブランド力
今夏のカメラメーカーの決算発表を見ると、多くの企業で売上高の伸び以上に「営業利益」の伸びが顕著になっています。この背景にあるのは、まさにインフレ局面における「販売価格への転嫁(値上げ)」の成功と言い切って良いでしょう。
通常、インフレによる仕入れ値の高騰は企業の利益を圧迫します。しかし、仕入れ値の上昇以上に販売価格を上げることができれば、企業は売上の伸び以上に利益(粗利)を膨らませることが可能です。
これが成立するのは、「高くしても売れる」という強いブランド力をメーカーが持っている場合だけです。
現在の「X100VI」をはじめとするXシリーズや「instax(チェキ)」の爆発的な人気を背景に、富士フイルムはコスト高騰分を迅速に価格へ転嫁し、利益率を維持・拡大する戦略をとっています(ここに歴史的な円安の追い風や、各社が数年かけて進めてきた固定費削減もガッチリと噛み合っています)。
同社は「必要な部材は確保した」としつつも、ソニーやキヤノンそしてニコンといった競合他社のように「大量生産して市場を製品で満たす」ようなアグレッシブな大増産に走る気配はありません。むしろ、過剰在庫リスクを徹底的に排除した「ややタイト(保守的)な生産体制」を維持しているように見えます。要するに、市場にモノを溢れさせないことで製品を一切「値崩れ」させず、手に入りにくいという「顧客の飢え」を逆手に取ることでブランド力(付加価値)をさらに向上させているのです。

今回の決算発表におけるイメージング事業の圧倒的な好業績(売上・利益の伸び)へとダイレクトに反映されています。

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