NPO法人科学映像館が、日本光学工業(ニコンの旧社名)が企画し、東京シネマ製作した記録映画「科学の眼-ニコン-」をYouTubeに公開しました。当時の日本光学工業における光学ガラス製造から、カメラ、顕微鏡、天体望遠鏡、測量機などの高度な光学機器が作られ、科学や産業に貢献する全容を描いた貴重な記録映画です。1967年に日本産業映画コンクール奨励賞を受賞した作品とのこと。
光学ガラスの製造(02:03〜)

- 調合と溶解
良質の珪砂に希元素など10数種類の原料を調合し、摂氏1500度のるつぼで溶かします 。割合によって230種類もの異なる性質のニッコールレンズを生む光学ガラスが作られます。 - 一貫作業
ガラス作りから完成まで自社で一貫して行う体制こそが、世界的な業績の基盤となっています。
レンズの設計と加工(02:42〜)

- 電子計算機による設計
かつては2〜3年かかっていた複雑な屈折率や収差の計算を、電子計算機(コンピューター)の導入により短時間で処理できるようになり、設計が飛躍的に進歩しました。 - 厳密な選別とプレス
生成されたガラスから「脈り(ひずみ)」などの不良部分を徹底的に除き、必要な大きさに割って熱を加え、プレス成形します。 - 磨きと検査
研磨剤でレンズを磨き上げた後、ニュートンリングを用いて精度を測る標準原器で1万分の2mm(0.2 μm)という極めて高い精度で球面を検査します。 - コーティング
真空蒸着装置を使い、レンズ表面にフッ化マグネシウムの薄膜を施すことで、光の反射を防ぎ透過率を向上させています。 - 接合と組み立て
性質の異なるレンズを貼り合わせて収差を除き、鏡胴(レンズの筒)へ精密に組み立て、ピントや解像力の厳しい検査を経て完璧な「ニコールレンズ」が完成します 。
カメラの製造と当時のラインナップ(10:17〜)

- 妥協なきカメラ組み立て
1台のカメラに使われる精度の高い部品は1000個を超え、ミラーボックスやシャッターなど、各工程でテストを重ねながら高い信頼性を構築しています。 - シャッター耐久テスト
当時、連続15万回に迫る過酷な耐久テストが行われていました。 - 登場する主な製品
- ニコン F / ニコン F フォトミック T
- 魚眼レンズから超望遠レンズに至る30種類以上の交換レンズ群
- モータードライブ(1秒4コマ、250枚連続撮影可能)
- ニコノス
- ニコン メガネレンズ
社会や科学を支えるニコンの光学技術(20:14〜)

- 顕微鏡・医療
生命の神秘を捉える微速度撮影用のミクロフレックスや、手術時に幹部を照らすリングフラッシュ付きの「メディカルニコール」。 - 天体望遠鏡
91cm天体望遠鏡の反射鏡を完全な精度に磨き上げる高い技術。 - 測量
国土開発に貢献するニコンのトランシット(経緯儀)や、巨大ダムの変位を600m先からミリ単位で監視するダム視準望遠鏡。 - 産業・先端技術
原子力時代に対応した放射線遮蔽窓用の特殊光学ガラス、時計の歯車などの精密部品を測定する「ニコン万能投影機」、印刷技術を飛躍させた「アポニコール」。 - マイクロエレクトロニクス
400ページの書物を切手サイズの面積に収める驚異的な解像力を持つ「ウルトラマイクロニッコール」が、のちの集積回路(IC)開発の大きな力となった歴史が語られます 。 - 超高速カメラ
1秒間に50万コマ・600枚の連続撮影が可能なカメラで、放電現象や弾丸発射の瞬間(空気の乱れ)の可視化に成功しています。
【考察】デジカメライフ的視点

今さら聞けない「ニコン」と「ニッコール」の由来。軍用光学から宇宙まで、伝統の「黄色い」歴史を紐解く
ニコンとニッコールの由来を徹底解説!三菱グループによる設立から、NASAに認められた宇宙品質、キヤノンへのレンズ供給、さらに「ニコンようかん」の秘密まで。100年を超える黄色い歴史と職人魂を紐解きます。
日本光学工業は、1917年に三菱合資会社社長・岩崎小彌太氏の出資のもと設立されました。のちに小型カメラのブランド名として大ヒットした「ニコン」の名は、1988年にそのまま社名(株式会社ニコン)へと変更され、今に受け継がれています。

東京・品川にある「ニコンミュージアム」を訪れれば、その深い歴史と伝統、そして光学へのアイデンティティを肌で感じることができます。しかし、地方在住のカメラファンにとっては、東京へ行く機会がなければなかなか立ち寄れない場所です。だからこそ、当時のものづくりの熱気や現場の空気をそのまま伝える今回のような映像は、私たちファンにとっても、日本の産業史にとっても「時代を超える貴重な財産」と言えるのではないでしょうか。

ちなみに、ニコンミュージアムでは、2026年10月22日から2027年2月27日まで、企画展「ファインダーの秘密—のぞいてみる。カメラで見る世界。」を開催予定です。もしこの期間に東京へ足を運ぶ機会があれば、映像の世界と現代の展示を合わせて体験してみてはいかがでしょうか。


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