米国とイランの混乱が長引きそうな気配があり、スタグフレーションの懸念がくすぶり始めています。世界のエネルギー供給の混乱が物価を押し上げ成長を圧迫した状況になった場合、カメラ業界はどのような影響を受けるのでしょうか。一緒に見てみましょう。

スタグフレーションとインフレの違い
インフレ
インフレはただの物価高のイメージがありますが、良い物価高の側面があります。それは給料が上がり、所得が増える。そして消費者は「新しいレンズを買おう!」という意欲が湧き、カメラメーカーも強気で新技術に投資できるような循環サイクルといった感じでしょうか。
スタグフレーション
スタグフレーションは、景気が悪く給料は上がらないのに、物価だけが上がる最悪の組み合わせ。もしスタグフレーションに陥ると、生活必需品(食費電気代)に圧迫され、趣味のカメラ予算が真っ先に削る必要に迫られる可能性も。一方メーカーはコスト増で値上げせざるを得ないが、売れないので苦境に立たされる。まさに悪循環。
カメラ業界がどのような影響を受ける可能性があるのか
製品価格のさらなる上昇
- 原油高によるプラスチック部材・部品・輸送費のコスト増。
- 円安に伴う原材料(半導体や特殊ガラスの原料など)の価格高騰。
- これらが製造コストを押し上げ、最終的な販売価格に転嫁される可能性。
買い替えサイクルの長期化
- スタグフレーション下では実質賃金が伸び悩み、可処分所得が減少。
- カメラ市場縮小以降、フィルムカメラ時代のように ” 趣味・嗜好品 ” としての側面が強くなり、生活必需品の物価高騰(食品や光熱費など)に押され、新機種への買い替えが後回しにされ易くなる。
カメラ市場「二極化」の加速
- 高価格帯(プロ・ハイアマチュア向け)… 資産価値を意識した現物資産的な需要や、仕事で必須な層が残り、比較的堅調。
- 中・低価格帯(エントリー・一般向け)… 最近コンデジ回帰の動きがありますが、スマホで十分という流れに戻り、経済的余裕がある層の減少により、市場がさらに縮小する恐れがあります。
その反面 中古・リセール市場の活発化する可能性
- 新品価格が高騰し、新品を手に出しにくくなる一方で、現金を現物(機材)に変えようとする動きや、より安価な中古品を求める動きが強まる可能性があります。
業界全体の動向
今後の原油価格の推移や各国の金利政策が、カメラのような精密機器業界の景気左右する鍵となるでしょう。主要カメラメーカーは利益率が高く付加価値も高い「ミラーレス上位機種」や「ハイエンドレンズ」に注力し利益を上げてきました。もしスタグフレーションが起こり長期化すれば、高級機であっても世界的な需要減退を免れない ” 最悪のシナリオ ” への警戒が必要となります。
影響を受けるメーカーと比較的影響を受けにくいメーカー
事業的に ” カメラ一本足打法 ” に近いメーカーほど、消費者の財布の紐が締まるスタグフレーションの影響をモロに受けます(※ライカは例外)。独断と偏見で分けてみました。
比較的影響を受けにくいメーカー
ライカ
顧客が太客であり、製品が ” 資産 ” として扱われるため、一般的な物価高の影響をほとんど受けません。むしろインフレ局面では、現物資産として需要が高まることも。
キヤノン
事務機器や医療機器など、景気変動に比較的強いBtoB事業が盤石です。また、製品ラインアップが幅広いため、リスク分散し易い構造。
ソニー
イメージセンサーの圧倒的な世界シェアを誇ります。自社カメラが売れなくても、他社(スマホ含む)にデバイスを供給することで利益を確保できる構造です。加えてエンタメ系事業も好調なだけにグループ全体で補える可能性。ソニーは、コングロマリット(複合企業)なので不況に強いと言われています。
影響を受ける可能性があるメーカー
ニコン
カメラ事業への依存度が以前より下がったとはいえ、依然として主要な柱です。また、半導体露光装置などの産業機器も景気敏感なため、世界的なスタグフレーションで設備投資が冷え込むと、ダブルパンチを受ける懸念があります。しかも大きな損失を出したばかり。ニコンは4月に新社長が就任し経営を立て直しを図ります。
富士フイルム
医療事業や材料事業などがあるのでグループ全体で見れば、それを補う可能性はあります。しかし決算発表を見る限り年々イメージングの存在感は増しています。加えてイメージング事業における ” チェキ ” のメインターゲットは若年層。そのためさらなる物価高になると顕著な買い控えが起きるかもしれません。大人向けのチェキ上位機種の展開も始めただけに、そちらも影響を受ける可能性があります。
製品価格上昇局面で私達はどう備えるべきか?
「新品は今が最安値」説
すでにコロナ以降カメラ&レンズ価格の値上がりは顕著です。スタグフレーションに陥った場合、さらなる価格上昇は確実視。やはり ” 今が一番安価 ” である事を心に留めておいた方が良いかもしれません。
「リセールバリュー」の重要性
物価が上がる局面では、現金の価値が目減りします。そのため、一部の人気機種のように ” 売却価格が落ちにくい機材 ” を持つことが、結果的に実質的な出費を抑える ” 資産防衛 ” になる考え方があります。
中古市場の活況
新品が高騰しすぎると、層の厚い中価格帯のユーザーが中古市場に流れ込む可能性があります。良質な中古在庫が枯渇し、中古価格が新品の定価に迫る(あるいは超える)逆転現象が起こる事も。これはコロナ以降の品不足状況の時に似たような事がありました。
買いたい時が買い替え時
もし欲しいカメラやレンズが登場すれば、購入するのかしないのか即決。そして購入するなら予約を入れるもしくは早い段階で購入するスタイルが、今後も正解になるかもしれません。それが唯一の防衛策に。
世界のエネルギー供給の混乱が懸念で終わり、金利や為替そして関税関連も落ち着き、安定した経済活動に戻る事に期待です。

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